AI時代に、自分で決める経験を会社がどう設計するか「 100万円ルール」のはなし

はじめまして。Rimoで社長室として働いている堀です。
今回はRimo Anvent Calendar 2025 Day20の記事として、
社内制度の説明だけでなく、その制度を使って
私自身がどんな判断をし、どんな迷いを経験したのか。
そして、それが仕事への向き合い方をどう変えたのかについて書いてみようと思います。
はじめに
私は新卒でRimoに入社し、最初の1年間は営業を経験しました。
その後、社長室に異動し、気づけば4年目になります。
Rimoは、いわゆる「完成された会社」ではありません。
プロダクトも、組織も、制度も、常にアップデートされ続けています。
そして社長室という立場は少し不思議で、
経営に一番近い場所で意思決定を見ながら、
同時に現場の違和感にも触れるポジションです。
「まだ言語化されていない課題」
「誰の仕事とも決まっていないボール」
そういったものが、日常的に転がっています。
今日は、そんな立場から、Rimoの制度のひとつである
「100万円ルール」について書こうと思います。
なぜ制度の話を書くのか
採用向けの記事というと、
ミッションやバリュー、カルチャーの話が中心になることが多いと思います。
もちろん、それらも大切です。
ただ、社長室から見ていると、もうひとつ強く感じることがあります。
それは、
制度は、その会社が「人に何を期待しているか」を一番正直に表すということです。
・どこまで任せるのか
・どこから責任を持たせるのか
・失敗をどう扱うのか
これらは、言葉よりも制度に現れます。
100万円ルールは、Rimoが
「主体的に考え、決め、やり切る人」を前提に設計されている、
とても象徴的な制度だと感じています。
100万円ルールとは何か
Rimoの100万円ルールは、
全社員に対して、一人あたり100万円の「利用権」を付与する制度です。
使途は原則自由
会社の成長に資すると本人が考えたものであれば可
事前承認は不要
基本は事後報告
一見すると、かなり大胆な制度に見えるかもしれません。
ただ、これは「自由にお金を使っていい制度」ではなく、
意思決定権と責任を、セットで個人に渡す制度だと思っています。
制度が生まれた背景①|金銭感覚のアップデート
この制度の大きな目的のひとつが、
会社規模に見合った金銭感覚を、個人レベルで身につけることです。
Rimoは毎年売上が2倍成長しており、
事業規模も扱う意思決定の重さも、大きく変わってきました。
一方で、個人が日常的に判断する金額は、どうしても数万円〜数十万円が中心になります。
このギャップがあると、
数万円の支出に過剰に慎重になる
数百万円単位の判断経験が積めない
という状態が生まれます。
100万円ルールは、
会社のスケールで物事を考え、判断する感覚を養うための仕組みとして設計されました。
個人の感覚を責めるのではなく、
「判断の前提そのものをアップデートする」ための制度です。
制度が生まれた背景②|小さな実験を増やすため
もうひとつの狙いは、小さな実験を促進することです。
新しい施策は、成功するかどうか分からないからこそ価値があります。
でも実際には、
失敗したらどうしよう
無駄遣いだと思われないかな
まだ確信が持てない
といった心理的ハードルが、「やる前」に人を止めてしまいます。
100万円ルールは、
そのハードルを意図的に下げる制度です。
小さな失敗ならしてもいい前提で、まずやってみる。
Rimoが大切にしている文化を、ルールとして明文化したものだと思っています。
100万円ルールができたとき、私が最初に考えたこと
100万円ルールが導入されたとき、
実は私の中にはすでに「やりたいこと」がありました。
というより、
社内を見ていて、必要だと感じていたことが見えていた
という感覚の方が近いです。
それが、採用広報でした。
当時、採用広報は社内の明確な役割として存在していたわけではありません。
もちろん、私自身も未経験です。
ただ、
「このままだと、Rimoのことが外にうまく伝わらない」
という違和感は、日に日に強くなっていました。
社内ではなく、外に助けを求めるという判断
Rimoは社員25名ほどの組織です。
それぞれがすでに自分の役割を持っていて、
新しい業務を誰かに追加する余裕はありませんでした。
そこで私は、
社内で完結させるのではなく、業務委託(副業)メンバーを集める
という選択をしました。
正直、不安もありました。
マネージャー経験のない私がまとめ役をやれるのか
お金を使う判断として正しいのか
本当に成果につながるのか
でも、ここで立ち止まってしまったら、
100万円ルールを使う意味がないとも思いました。
Team-horiの誕生
結果として、約2ヶ月で9名の複業メンバーが集まりました。
名前は「Team-hori」。
もっとかっこいい名前をつけたかったのですが、
「結局一番わかりやすい」ということで、とりあえずこの名前に落ち着きました。笑
それぞれ依頼している業務は違います。
コンテンツ、設計、言語化、運用など。
でも、同じ目的に向かって進むチームです。
やってみて良かったこと|経験に投資するという感覚
一番良かったのは、圧倒的にスピード速く実行できたことです。
皆さん経験者なので、
他社ではどうしているか
どこでつまずきやすいか
何をやらない方がいいか
を、事例ベースで教えてもらえました。
未経験の私ひとりでは、
おそらく何倍もの時間がかかっていたと思います。
これは、
「お金を使ったからできた」というより、
経験に投資したことで、学習速度が上がったという感覚でした。
一番エネルギーを要したこと|最後は自分が決めるという責任
一方で、この制度を使う中で
一番エネルギーを要したのは、最後の決定権が自分にあるという点でした。
アドバイスはもらえる。
選択肢も出てくる。
でも、
「どれが正解か」は誰も保証してくれません。
経験がないからこそ、
本当にこれでいいのか
もっと良いやり方があるのではないか
この判断を、社内に説明できるか
と、決めるまでに時間がかかることも多かったです。
特に、
自分が納得できないと、社内に説明できない
というプレッシャーはいまでも大きいです。
どう乗り越えたか
正直に言うと、
この状況を「一人で乗り越えた」とは思っていません。
副業メンバーの中に、
考えを言語化するのを手伝ってくれる人がいて、
毎週のように壁打ちの時間をつくってもらっています。
「何が不安なのか」
「どこで判断が止まっているのか」
それを言葉にしていくことで、
自分でも気づいていなかった前提や思い込みが、少しずつ整理されていきました。
判断軸が見えてきた、というより、
判断できない理由が見えてきた、という感覚に近いかもしれません。
さらに途中から、
Rimo社員が1名チームに加わってくれました。
誰かが代わりに決めてくれるわけではありません。
でも、
一緒に考えてくれる人がいるという事実が、
判断を前に進める大きな支えになっていました。
(余談)運用で解決したとはまだまだある
現在は、Slackのひとつのチャンネルで進めています。
それぞれが何をやっているかが見えるのは良い点です。
一方で、
メンバーが増えて会話が埋もれてしまうことも増えました...
チャンネルを分けた方がいいのか。
でも分けると、今度は見落としそうで怖い。ここは今も試行錯誤中です。
100万円ルールの価値
社長室の視点で整理すると、100万円ルールを整理すると以下のとおりです。
意思決定スピードを落とさない
個人の金銭感覚を会社スケールに引き上げる
小さな実験を増やす
そして何より、
人は、任されてはじめて育つ
という前提に立っている制度だと改めて思いました。
AI時代と「経験」の話
私自身も、日常的にAIを使っています。
ただ、AIが返してくれるのは
いまは「すでに整理された過去の知識」です。
最近、「おてつたび」の永岡さんが話していた言葉が、
この感覚をとてもよく表していると思いました。
ネットの中に答えはなくて、
一次情報・二次情報の中にしか答えはない
AIを使えば、正解っぽいものはすぐに出てきます。
でも、決めて、動いて、引き受けた経験は、
AIには代替できません。
さいごに
Rimoは、まだまだ成長中の会社です。
でも、挑戦したい人に対して、
裁量と責任をちゃんと渡そうとする会社でもあります。
100万円ルールは、その象徴です。
Rimoでは、その挑戦ができます。
一緒に挑戦して、はたらく仲間を募集しています。
Day21の記事はこちら▼
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