インド人エンジニア大量採用とAI活用で挑む、Rimoの開発組織スケール戦略

更新日:2025/12/10 9:53
X(formerly Twitter)facebook
cover

こんにちは。 Rimo合同会社 CTO の山田祥允です。
Rimo Advent Calendar 2025 2日目の記事として、 Rimoの開発組織についてお話しします。

Rimoの開発組織はこうやってスケールしている

Rimo はここ数年、売上も人員もほぼ毎年 2 倍ペースで成長してきました。
今後もこのスピードを落とすつもりはありません。

一方で、単純に「人数を増やす」だけでは開発組織はスケールしません。
Rimo が選んだやり方は、

  • 日本:ミドル〜シニアの即戦力エンジニア

  • インド:新卒・学生のジュニアエンジニアを大量採用&育成

  • そして AI(Claude Code)をフル活用する開発プロセス

という、ちょっと変わった組み合わせでした。

この記事では、
「インド人エンジニアがどんどん増える中で、Rimo の開発組織がどんな課題にぶつかり、どう解決してきたか」
についてお伝えしします。


日本 × インドのハイブリッド開発チーム

現在の開発組織は、ざっくりいうとこんな構成です。

  • インド人エンジニア

    • 新卒社員 3 名

    • 内定者アルバイトとしてほぼフル稼働している学生が約 15 名

    • 合計 18 名ほどのインド人エンジニア

  • 日本人エンジニア

    • 正社員5名

    • 業務委託数名(パートタイムの副業含む)

    • ほぼ全員がエンジニア経験5年以上のミドル〜シニアクラス

つまり、人数比で見るとインド側が圧倒的多数です。
インド側はポテンシャルは高いものの、ほとんどが「経験年数の浅いジュニア」。
一方、日本側は 即戦力としてコアな開発を進めつつ、インド側の育成・レビューも担う という役割です。


「インターン → 内定 → 内定者バイト」で育てる

インド人エンジニアの採用は、インターンを入り口にしたプロセスとして設計しています。

  1. インドの大学生向けにインターン募集

    • 応募は毎年 100〜数百人規模

  2. その中から 5〜10 名ほどを選抜し、オンラインインターンを実施

  3. 活躍したメンバーに 内定オファー

  4. 内定後は 「内定者アルバイト」としてほぼフルタイムで参画

    • インドの大学では、長期インターンが単位認定されるケースも多く
      → 学生にとっても 「単位も取れて、給与ももらえて、経験も積める」 という win-win

このモデルのおかげで、学生の段階から実戦レベルの仕事を任せつつ、卒業する頃にはかなり戦力になっている、という状態を作れます。


なぜインドなのか? 採用戦略としての狙い

インドでの採用を強化している背景は、ざっくりいうと次の 3 つです。

  1. 優秀な新卒エンジニアを採りやすい

    • 日本は人口減少や新卒市場の競争が激しく、優秀層の奪い合いになっている

    • 一方インドには、コンピュータサイエンスを学ぶ優秀な学生が非常に多い

  2. 多言語・国際環境に強い

    • インドのエンジニアは、英語+母語を含む複数言語に慣れている人が多く

    • 「自分が分からない言語がチーム内で飛び交う状況」にも強い

    • 日本に来て働きたい人と志望してくれる人も多く、国際チームを作りやすい

  3. Rimo のグローバル展開との相性

    • 将来的にプロダクトを 多言語対応・グローバル展開 することを見据えると、

    • 英語+母語を含む複数言語をベースに動けるメンバーが多いことは大きな強み

こうした理由から、Rimo では「日本でシニアを採り、インドでジュニアを大量に育てる」という戦略を取っています。


インド側が一気に増えて見えてきた「3つの課題」

もちろん、良いことばかりではありません。
インド側の人数が一気に増えた結果、開発現場では次の 3 つの課題がはっきり見えてきました。

  1. PR が大量に出てきて、レビューが完全にボトルネックになる

  2. 成果物(コード)の質にばらつきがあり、全体としてまだレベルが低い

  3. 育成コストが重い

    • 日本人エンジニア自身にも進めるべきプロジェクトがある中で

    • ジュニアのメンバーにも丁寧にフィードバックを返す必要がある

ここからは、それぞれの課題に対して Rimo が実際にやったことを紹介していきます。


課題1:レビューのボトルネックを、AIとプロセスで崩す

① Claude Code による自動レビュー

レビューのボトルネックに対しては、まず Claude Code による自動レビュー を導入しました。

  • PR が作成・更新されるたびに Github Actions で Claude Code による自動レビューが走り、

    • コードスタイルや基本的な設計、

    • プロジェクトごとのコーディング規約違反
      などを自動でチェックします。

ここでは、「単に Claude Code のレビューコマンドをそのまま使う」のではなく、Rimo 用に作り込んでいます。

  • レビュー観点をすべて Markdown ドキュメントに列挙

  • 例えば:

    • React コンポーネント設計のルール

    • Go のエラーハンドリング方針

    • テストコードの書き方

    • 命名規則 …など

  • それぞれの観点ごとに別々の「サブエージェント」として Claude に読ませ、

    • 観点ごとにチェックさせる ことで、コンテキスト圧迫を避けています

観点が増えれば、このドキュメントを更新するだけで AI のレビューも賢くなる、という仕組みです。

実際に入れてみてどうだったか

良かった点:

  • インド側のメンバーが AI の指摘を一通り反映してから 人間にレビュー依頼を出すようになった

    • → PR の「最低限直すべきところ」は AI の段階でかなり潰れる

  • また、思わぬ副産物として

    • 日本人シニアエンジニアが「自分でサッと見てそのままマージ」していたようなコードにも

    • Claude が事前に目を通してくれるようになり、思わぬバグ検知にも貢献

一方で、課題もありました。

  • 全ての push で自動レビューを走らせると、

    • 同じようなコメントが何度も出てきて

    • PR がコメントだらけになり、読みにくくなる問題

そこで、運用を次のように調整しました。

  • 最初の PR 作成時に 1 回レビュー

  • 以降は、

    • 専用のラベルを付けたときだけ 再レビューを走らせる

この辺りは、まだまだ改善の余地があり、日々改善を進めています。


② 「動作確認は実装者の責任」という文化づくり

AI に任せきりにしないために、PR テンプレートとプロセス側の工夫もしています。

PR テンプレートには、必ず次の項目を書かせています。

  • この PR で対応している 要件・背景

  • どのような アプローチ・設計方針 をとったのか

  • 実施した テスト内容

    • 手動の動作確認のケース

    • 書いたテストコードの概要

  • テスト結果

これにより、

  • レビュワーは

    • 「要件を満たしているか」「バグがないか」を一から自分で確かめる必要がなくなり

    • 代わりに 設計・保守性・命名などの技術的観点に集中できる

  • 実装者側には

    • 「動作確認を自分の責任でやる」

    • 「テストケースを自分の頭で設計する」
      という意識が根付きつつあります

実際、テンプレートを通じて「明らかに動作確認していない PR」も見抜きやすくなり、
その場で「ちゃんと動作確認してから出してね」とフィードバックできるようになりました。


課題2:Claude Code + CLAUDE.md で最低限の品質ラインを揃える

インド側のメンバーは、ポテンシャルは高い一方で、経験年数が浅く、コード品質にばらつきが出やすい という課題がありました。

そこで、

  • インド人メンバーには Claude Code を標準ツールとして配布

  • Rimo 独自の CLAUDE.md を読み込ませた状態で使ってもらう

という形を徹底しています。

これにより、

  • 「とりあえず AI なしで書いたコードをそのまま出す」のではなく、

  • 一度 AI と一緒にブラッシュアップしてから PR にする

  • というフローが、インドメンバーの中に当たり前になりつつあります。

結果として、

  • まだまだ完璧とは言えないものの、

  • “AI レベル” の最低品質ライン を全員がクリアしやすくなり、

  • 人間のレビューは「その先」の改善に集中できるようになってきました。


課題3:評価ラダーで「どう成長すればいいか」を可視化する

3つ目の課題は、育成コストの重さでした。

インド側のメンバーは、AI を使えばある程度自走できますが、
「そもそもAIに何を聞けばいいのか」が分からない という壁があります。

そこで Rimo では、次のようなアプローチを取りました。

  • エンジニア向けの 評価ラダー を用意

    • レベル 1, レベル 2,… と段階を定義

    • 各レベルごとに

      • 技術観点で「できていてほしいこと」

      • 成果物の観点で「こういうアウトプットが出せている状態」
        を具体的に言語化

  • 「あなたは今はレベル 1。レベル 2 に上がるには、このあたりを伸ばす必要がある」
    と、自分の現在地と次のステップを明示

これにより、

  • メンバーは

    • 「どこを伸ばせばいいか」

    • 「どのテーマについて AI に相談すればいいか」
      を自分で考えやすくなり、

  • 自己成長を設計しやすい状態 を作ろうとしています。

正直、これはまだ始めたばかりの取り組みで、
ここからどこまで機能するかは観察フェーズではあります。

ただ一つ言えるのは、現在のレベルと足りていない部分を明確に示したことで、

  • 「このままだと AI に仕事を取られるかもしれない」という
    ちょうど良い危機感 を持ってくれたメンバーも多く、

  • それがきっかけで、
    案件の進め方やスキルアップへの意識が変わってきた という感触があります。


Rimo の開発組織で得られる経験

ここまで、うまく進めているような施策を紹介してきましたが、
実際にはうまくいくことばかりではなく、日々トライアンドエラーの繰り返しです。

ただ、その分 得られる経験の振れ幅も大きい と感じています。

1. 職種の壁を超えた、幅広い開発経験

Rimo はまだ小さめの開発組織です。
その分、より幅広い経験を積むことができます。

  • フロントもバックエンドもインフラも触る

  • ビジネスサイドと一緒に「そもそも何を作るべきか」を考える

  • お客様の声を聞きながらプロダクトの方向性に口を出す

といった、「職種の枠を超えたフルスタックな経験」 を積みやすい環境です。

2. 国際チームをリードするマネジメント経験

インド人エンジニアが多数いるので、

  • 英語でのコミュニケーション

  • 文化の違いを踏まえた仕事の進め方

  • ジュニアメンバーを束ねて案件を進める

といった、国際的なマネジメント・リードの経験 を自然と求められます。

これは「日本人だけのチーム」ではなかなか得られない経験だと思います。

3. AI と一緒に開発するのが当たり前の環境

Rimo 自体が AI プロダクトを提供している会社なので、

  • 自分たちの開発プロセスにも 徹底的に AI を使う

  • Claude Code Actions によるレビュープロセス

  • CLAUDE.md などの“AIに読ませるガイドライン”を育てていく

  • 「AI に任せるところ」と「人間が判断するところ」を設計していく

といった、“AI とともに開発する”経験 を日常的に積むことができます。


こんなエンジニアに来てほしい

最後に、Rimo の開発組織として「ぜひ一緒に働きたい」と思っているのは、こんなタイプのエンジニアです。

  • プロジェクトを前に進めるのが好きな人

    • 「人が足りないけど、やりたいことは山ほどある」という状態なので、

    • 自分でどんどんボールを拾って、案件を進めていける人

  • 新しい技術にどんどんチャレンジできる人

    • AI 時代の開発は、技術の変化がとにかく速いです

    • 変化を怖がるというより、「面白そうだから触ってみるか」と思える人

  • インド人エンジニアと一緒に戦いたい人

    • チームを引っ張るリーダー的な立場に興味がある人も、

    • まずは個人としてバリバリ開発して貢献したい人も、どちらも歓迎です

  • AI に頼りつつも、AI に負けないアウトプットを出したい人

    • 「AIをフル活用して、生産性を最大化したい」

    • あるいは「AIなんかに負けないくらい自分で書ける」

    • どちらのスタンスでも構いません。
      ただし、どちらにせよ アウトプットを出すことに本気でコミットできる人 に来てほしいと思っています。


Rimo は、毎年 2 倍のスケールを目指しながら、
AI と国際チームを武器に、開発組織そのものも実験・改善を続けています。

ここまで読んで「このカオス、ちょっと面白そうだな」と感じていただけたなら、
ぜひ一度、カジュアル面談で話しましょう。


Day3の記事はこちら▼
インド新卒エンジニア3人の来日オンボーディングに1週間フルコミットしてみた話

インド人エンジニア大量採用とAI活用で挑む、Rimoの開発組織スケール戦略 | Rimo