インド新卒エンジニア3人の来日オンボーディングに1週間フルコミットしてみた話

インド新卒エンジニア3人の来日オンボーディングに1週間フルコミットしてみた話

Rimoでコーポレート全般 主に人事をやっている大谷 昌継です。Rimo Anvent Calendar 2025 Day3を担当します。
おもに人事の仕事をしながら、社内にコーポレート専任の社員が自分しかいないので、経理の仕事もやっていたりします。
全員がオーナーシップを持つ自律分散型の組織を実現するために。Rimoが選んだバックオフィス構築とバクラク導入の理由
今日は、インド新卒エンジニア3人が“本格的に”日本にやってきたときに、
人事が到着日から最初の1週間をフルコミットして伴走した話を書きます。
住まい・社宅・社員貸付制度・不動産交渉といった「住居編」はボリュームが大きいので、今回はあえて切り出して、
到着当日のオペレーション
最初の1週間でやり切りたかったこと
ビーガンの食・文化ギャップへの向き合い方
SIM/銀行/SmartHRなど生活インフラ立ち上げ
それを全部Slackで“公開プロジェクト化”したこと
あたりにフォーカスして振り返ってみます。
Rimoでは、インドからの新卒エンジニア採用に力を入れてきました。2023年2月から、
採用イベント → オンラインインターン → オファー → 内定者期間…とステップを踏んで、今年ついに、3人のインド新卒エンジニアが日本に“本格的に”やって来ました。
実はその1年前、彼らがまだ「内定者」だった頃に、1週間だけ日本に来てもらう「お試し来日」をやっています。
日本オフィスやメンバーの雰囲気を知ってもらう
将来の生活イメージを持ってもらう
こちらも「どんなサポートが必要か」を体感する
という狙いだったのですが、このときに痛感したのが、
「ビーガンだと、ちょっと外食するだけでも全然“ちょっと”じゃない」
という現実でした。
日本では、
「その辺の定食屋さんで」「コンビニでなんか買えば」
というノリは、ビーガンの人にはほぼ通用しません。
原材料表示を全部見たり、食べられるお店を探したり、“普通の外食”のハードルが想像以上に高い。
結果として、
「自分で料理できる環境」と
「食材が手に入る場所」
がないと、生活そのものが回しづらい、ということを、彼らもこちらも身をもって学びました。
この1週間のお試し来日は、今年の本番オンボーディング設計にかなり効いています。
今回の記事では「住まい」の話は一旦置いておいて、
来日当日のオペレーション
最初の1週間でやり切りたかったこと
ビーガンの食・文化ギャップへの向き合い方
SIM/銀行/SmartHRなど生活インフラの立ち上げ
それを全部Slackで公開していった話
をまとめてみたいと思います。
(住まい・社宅・社員ローン・不動産の話は、ボリュームが大きすぎるので別記事にします)
1年前の「お試し来日」で分かったこと:外食できないと、生活が回らない
まず振り返りとして、1年前の内定者1週間来日の話から。
このときの私のイメージは、かなり雑でした。
「ホテルに泊まってもらって、オフィスに通って、夜はみんなでご飯行って…」
くらいで考えていたのですが、実際にやってみると、
ビーガン対応の店がそもそも少ない
日本語メニューしかなく、店員さんとのコミュニケーションもハードル
コンビニ・スーパーでも、原材料を全部チェックしないといけない
という状態で、「ちょっと出て食べよう」が、
「かなり頑張って、やっと1食食べられる」レベルのプロジェクト
になってしまいました。
この体験から、少なくとも次は
外食に頼りすぎない設計
自分で料理できるための土台(キッチン+調理道具+近所のスーパー)
ビーガンOKな店のリストを最初から用意しておく
が必須だと分かりました。
今年の本番オンボーディングは、この反省を前提に組み立てています。
Day 0:到着当日は「計画通りにいかない前提」で設計する
ここから今年の本番の話です。

インド新卒3人が羽田に到着した当日、午前8時のSlackはこんな感じで始まります。
I believe you’ve already arrived. Thank you for enduring such a long flight.
I’m waiting at the location I mentioned yesterday.
(もう着いてる頃だと思います。長いフライトおつかれさま!
昨日お伝えした場所で待ってます。)
この時点で頭の中にあったタスクはざっくりこんな感じでした。
入国審査・在留カードの発行がどれぐらいかかるか読めない
荷物の量によって、電車かタクシーか動線を変える必要がありそう
入国から1ヶ月はマンスリーマンションに滞在する。解錠するための情報は午前中にメールで来る。
案の定、彼らからはこんなメッセージが飛んできます。
Sir we are in queue of issuing resident card.
And it is long so it will take some time.
(今、在留カードの発行待ちの列に並んでます。結構長いので、少し時間かかりそうです。)
そこで即座に、事前に用意していたプランBに切り替えました。
プランA:一度オフィス(渋谷)に来てもらって、そこからそれぞれの住まいへ
プランB:空港でマンスリーマンションの鍵情報を待ち、そのままタクシーで住まいへ直行
荷物が想像以上に多かったこともあり、Slackではこんなメッセージを出しています。
荷物がすごい多いのでオフィスに行くのではなく、タクシーで直接三軒茶屋に行ってもらうことにしました。
学びはシンプルで、到着初日は「綺麗なタイムテーブル」を信じないことです。
“この時間に空港で会って〜” ぐらいだけ決めておいて
そこから先はプランA/Bの分岐を持った状態で臨む
「人事はバッファを持って、本人たちの予定はできるだけシンプルに」。
今年の正解は、この設計だったと感じています。
最初の1週間でやり切りたかったこと
到着日を乗り切ると、次は 「最初の1週間」 です。
Slackでは、彼らにこんなスケジュールを共有していました(日本語意訳):
Weekend:会社イベントはなし。各自休む&生活に慣れる
Monday:
委託した会社の担当者が朝8:00に迎え → 区役所で住民登録、銀行口座作成など
そのあと渋谷オフィスでPCの受け渡し・セットアップ
希望者はそのまま携帯の購入サポート
Tuesday:自宅からリモート。PCセットアップに集中
Wednesday:オフィス or 在宅
Thursday:オフィス出社。入社式を実施
この1週間で「最低限ここまで行きたい」と決めていたのは、次の4つです。
1. 法的な“居場所”をつくる
在留カード → 住民登録 → マイナンバーの流れをスタートさせる
銀行口座開設の準備
2. 仕事道具を揃える
PCの受け渡しと初期セットアップ
オフィス入退館の顔認証登録
3. コミュニケーション環境を整える
Slack/社内ツールの説明
Wi-Fi環境(オフィスの本番用SSIDを共有)
日本国内の電話番号(SIM)
4. 生活関連の“最初の一歩”を渡す
ビーガン/ベジタリアン向けランチマップ
それぞれの家の近所のスーパーやインド食材店の場所
「何か困ったらこのチャンネルで聞いていいよ」という場の提示
この「4つのセットアップ」が済むと、
“とりあえず明日も日本で仕事しながら生きていける”状態 になります。
ここから先の「住まい本番」「家具家電」「ガス・電気・ネット」は、別フェーズとして設計しました(→次回記事)。
ビーガン対応:食はインフラであり、カルチャーそのもの
1年前のお試し来日を経て、一番意識していたのが「食」です。

1. ランチは「連れていく」のではなく「選べる状態」にする
最初の週に、渋谷周辺のビーガン/ベジタリアン対応店をマップにして共有しました。
Vegan Lunch 渋谷ビーガンランチ
Indian Grocery Stores インド食材店
…
という感じで、Google MapsのリンクをSlackに貼り、
「このあたりから選べるし、分からなければ一緒にいこう」
というスタンスにしました。
誰かが行ってみて「ここ良かったよ」と言ってくれたら、そのままマップをアップデートしていく運用です。
2. 自炊前提なので、近所のスーパー・インド食材店を最初に案内する
住んでいるエリアごとに、
徒歩圏のスーパー(ダイエー/西友/オオゼキ etc.)
インド/アジア食材店
大きめのショッピングモール(最初に行っておくと安心な場所)
をSlackで共有して、
「ここに行けば材料はだいたい揃う」
という目印を作りました。
去年はここがふわっとしていて、「どこで何を買えばいいのか」が本人たちにも見えづらかったので、今回は最初からそこに時間を割いています。
3. 「食」の話題をタブーにしない
宗教的な背景や価値観が絡む分野でもあるので、むしろ意識してオープンに話すようにしました。
何がNGで、何はOKなのか
日本のパッケージ表示で混乱しそうなポイントはどこか
スパイスや豆など「これは日本だと手に入りにくいから工夫したい」ものは何か
こういう話題をオープンにしておくと、
「これ食べてみる?」
「その店は◯◯が入ってるからやめとこうか」
といった会話がしやすくなります。
生活インフラ:SIM/銀行/SmartHRなど「住まい以外」の部分
SIMとスマホ:支払い方法まで含めてセットで設計
電話番号とデータ通信は、

不動産とのやりとり
2段階認証
日常の連絡手段
すべての土台になります。
今回は、
キャリアは楽天モバイルを選択し、
インドで使っていたスマホがeSIM対応端末かどうか
本体を分割で買うのか、いったんSIMだけにするのか
を一緒に検討しつつ、店舗に同行して申し込みしました。
正直、一番の落とし穴は「支払い方法」でした。
ゆうちょ銀行で口座引落をするためには、SMSのできる携帯電話の番号が必要、ないと出来ないなど、詰んでしまうことが発生しました。
(結局何とかしたのですけど、)各種手続きの順番や各銀行や携帯電話キャリアの認証の組み合わせで、進まない問題がいくつかあることを一緒に行ったことで知ることができました。
銀行・給与・税金の「ざっくり説明」は早めにやる
銀行口座は、
インターン時代の支払い(INR → JPY)
正社員給与の受け取り
家賃・SIM・光熱費の引き落とし
すべてのハブになります。
今回は海外人材サポート会社(Toppan Travel)に依頼し、
ゆうちょ銀行での口座開設をセットで行いました。
また、インド時代からの流れで
源泉徴収税(TDS 20%)
日本での社会保険
手取り額と固定費のバランス
といった話も、ざっくりですが早い段階で説明するようにしました。
(このあたりも、税務・制度の話だけで1本書けるボリュームなので、今回は深追いしません)
SmartHRで「住所・勤怠・年末調整」の導線を引いておく
社内の人事手続きは、SmartHRに集約しています。
住所変更
年末調整
給与明細の閲覧
などをすべてSmartHR経由にしているので、来日して生活が落ち着いてきたタイミングで、
「SmartHRから招待メールが行っているので、ログインしておいてね」
と案内しました。
これを早めにやっておくと、後で引っ越ししたときに
「住所どうやって変えればいいですか?」に毎回答えなくて済みます。
Slackに全部流す:オンボーディングを「公開プロジェクト」にする
今回のオンボーディングでは、最初から
#onboarding-to-japan2025xx という専用チャンネルを作り、
到着日の動き
区役所の予定
SIM/家具/家電の相談
ランチマップやスーパー情報
「今日◯◯に行くけど一緒に行く?」
といったやりとりを、全部そこに流すようにしてみました。
やってみて感じたメリットは3つあります。
ログがそのまま「次のバッチへのマニュアル」になる
来年以降のメンバーに「このチャンネルの過去ログ見ておいて」でかなり伝えることができる
自分も「あの時どうしたっけ?」を検索しやすい
他のメンバーも状況を把握しやすい
「今こんなことやってるんだ」が見えるので、自然と声をかけてもらえる
日本人メンバーが近所のおすすめ店を教えてくれたりする
「困ったらここで聞いていい」という心理的安全性がつくれる
DMや個別チャットに閉じないので、「自分だけが困っている感」が薄まる
他の人の質問を見て、「あ、これ自分もやらなきゃ」が分かる
オンボーディングを
「人事と本人だけの裏側作業」ではなく、「会社全体のプロジェクト」にする
という意味でも、このやり方はかなり良かったと感じています。
人事として感じたこと:最初の数歩を一緒に歩くという仕事
インド新卒3人の来日オンボーディングをやってみて、あらためて思ったのは、
海外から人を雇うということは、「働いてもらう」だけでなく、
「生活の最初の数歩を一緒に歩く」ことでもある
ということでした。
空港で待ち、在留カードの列の長さに一緒に驚き、
タクシーでスーツケースを運び、
区役所で番号札を取り、
SIMの支払い方法を一緒に変更し、
ビーガンで入れる店を探し、
Slackで「何か困ってない?」と声をかける。
これらはどれも、「人事のジョブディスクリプション」にきれいに書ける類の仕事ではないかもしれません。
でも、こういう時間を一緒に過ごしたかどうかで、その後の信頼残高は全然違うと感じています。(段取りが悪いから信頼残高がマイナスかもしれない。。。)
来年以降、さらに多くのインド新卒が日本に来る予定です。
人数が増えるほど、仕組み化・自動化は必須になりますが、
同時に、最初の数週間だけはあえて“やりすぎ”なくらい寄り添うことも続けていきたいと思っています。
住まい・社宅・社員貸付制度・不動産交渉まわりの「住居編」は、また別の記事で詳しく書きます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
同じように海外メンバーのオンボーディングに向き合っている方がいたら、ぜひどこかで情報交換させてください。
そして、エンジニアだけではなくコーポレートでも経理や採用担当の採用を積極的に行っているので、興味のある方カジュアルにお話しましょう!
2026年4月に3人、10月には12人のインド新卒エンジニアが増えるので、海外メンバーをまとめるEMが更に必要です。
心当たりの方はこちらからお話させてください。
https://www.wantedly.com/projects/1865747
その他、採用情報はこちらから
https://jobs.rimo.app/
— 大谷 昌継 / Rimo合同会社 人事責任者

Day4の記事はこちら▼
少人数PdMの生存戦略:Rimoの急拡大する開発組織で、AIと要求をつくる
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