少人数PdMの生存戦略:Rimoの急拡大する開発組織で、AIと要求をつくる

更新日:2025/12/10 9:58
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こんにちは。Rimo合同会社でプロダクトの責任者として、PdM兼エンジニアをしている保坂です。Rimo合同会社 アドベントカレンダー4日目の記事として、RimoのPdMがどのようにAIを活用して仕事をしているかについてお話しします。

はじめに

Rimo合同会社では、Rimo VoiceというAIを活用した文字起こし・議事録作成サービスを主に開発・提供しています。

現在、Rimoの開発体制はエンジニア22名(日本4名+インド18名)に対して、PdM2名、デザイナー1名で構成されています。

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エンジニアに関してはここ1年ほどで元々3名ほどの体制だったところから急激にスケールしているのですが、PdM・デザイナに関しては元々エンジニアが要件にオーナーシップを持つ文化なことや、開発物がエンジニアリング知識を多く必要とするものだったこともあり採用について慎重になっていたため、エンジニアに比べ体制の構築が追いついていない状況です。

絶賛一緒に働いてくれる仲間を募集中です!!が、この記事ではPdM・デザイナがボトルネックにならず、Rimoで少人数PdMがどうプロダクト開発の中でAI利用など工夫しているかについて、お伝えします。

Rimoの開発体制については、2日目の弊社 山田の「インド人エンジニア大量採用とAI活用で挑む、Rimoの開発組織スケール戦略を合わせてご参照いただければと思います。

早速、PdM業務のどこでAIを使っているか

私がPdMとしてAIを活用しているのは、主に以下の領域です。
※要件定義〜開発はエンジニア側で開発からレビューまでAI利用をしています。

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  • 課題定義:ClaudeCodeでのBigQuery用の分析

  • 要求検討:既存仕様の調査、PRD(プロダクト要求仕様書)の作成、Issue作成。

  • デザイン:Figma Makeを使ったプロトタイピング

  • テスト:テスト観点・ケースの洗い出し

  • 運用・保守 : 自動のバグ調査

そして、当然ですが全体を通してRimo Voiceを使って会議の中で出たアイデアや決定事項をまとめ、要件としてまとめ直し・反映しています。

今回は、特に「要求検討」にフォーカスしてお話しします。ここが最もAI活用の効果が大きく、かつ工夫が必要だった領域だからです。

要求検討:既存ツールを試して感じた限界

要求検討のAI活用にあたり、まずは既存のツールをいくつか試しました。

ChatPRD

AIがPRDを生成してくれるツールです。豊富なフォーマットがある点や、要件のブラッシュアップなどのモードがある点が特徴的だと感じました。

ですが、日本語対応が不十分で、ほとんどのフォーマットは現在必要としているものではなかったため合わないと感じました。

また、既存のコードベースを確認した上で要件を出してくれるわけではないので、Rimoの現状を踏まえた要件にはなりませんでした。

Kiro / spec-kit

どちらもスペック駆動開発を行う際のツールで、全手順を使わなくても例えばSpecKitでは specify や clarify など一部の初期ステップのコマンドを実行することでユーザーストーリーの明確化などを行うこともできます。

ただ、これらはAIへの指示に最適化されている分、「人間が読んで理解する」という用途には向いていませんでした。無駄な記述が多くなり、それを確認する手間が増えてしまう。結果として、生産性が逆に落ちてしまうという問題がありました。

自分一人で0からVibe Codingする際にはよく利用するのですが、既存で動いているシステムに対してシャープに人に伝わる要求を出そうとすると、これらの既存ツールでは満たせないという結論に至りました。

自作のClaude Codeコマンドで解決

最終的にたどり着いたのは、Claude Codeで自分専用のコマンドを作成するというアプローチです。ClaudeでプロジェクトとMCPを利用するというのも検討し実施しましたが、今回は既存コードの調査を詳細に行いたい、サブエージェントも有効に利用したいという思いからClaude Codeの利用に至りました。

作成したのは主に2つのコマンドです。

  1. 要件調査コマンド:Rimoの既存コードを確認し、新しい要件がどの点で問題になるかを整理する

  2. 要件記載コマンド:調査結果を踏まえて、PRDを作成し、抜け漏れを確認する

要件記載コマンドの処理の流れは以下のようになっています。

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ポイントは、既存仕様をちゃんと確認させること、複数のエージェントに役割を分けていることです。「調査担当」と「PdM担当」を分けることで、それぞれの責務が明確になり、出力の精度が上がりました。

また、コマンドでの依頼時はプロンプトで要求を支持するのではなく、GitHub Issueに箇条書きでドラフトメモやRimoの議事録の文字起こしから生成したメモを記載しておき、そのリンクを与えるだけで要求を生成できるようにしています。

他にも、外部サービスを多く使う関係からMCPに「Context7」を使うだったり、ここには記載しきれませんがRimoの事情に合わせていくつか調整をしています。

成果:1〜3日 → 10分〜1時間へ

この仕組みを導入した結果、要件記載にかかる時間が劇的に短縮されました。

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以前は、要件の洗い出しから既存仕様の確認、ドキュメント作成まで、複雑な機能だと丸1日以上かかることもありました。

今は、1週間分のissueをまとめた内容をAIに送るだけで、裏で処理が走り、10分ほどで草稿ができあがります。それを確認・修正する時間を入れても、1時間程度で完了します。

苦労したポイント:「書かないこと」を決める難しさ

最も苦労したのは、抽象度のコントロールです。

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AIは親切なので、あらゆることを詳細に書こうとします。しかし、Rimoでの要求定義の目的は「エンジニアに意図を伝え、コラボレーションする」ことであり、ただ作ってもらうことではありません。ただ書いた通りに作れば済むものは、自分でAIに依頼すれば十分なため、エンジニアと協業することで、よりブラッシュアップされるものを渡すべきです。

そのためには、下記が特に重要だと思います。

  1. 言わなくてもいいことを省く : 既存のルールを見ればわかること、チームの暗黙知として共有されていることは書くとノイズになります。特に、エンジニアがAIを使う時にもルールとして組み込まれていることを二重に記載するのは無駄になります。

  2. エンジニアが考える余地を残す すべてを指定しすぎると、エンジニアの創意工夫が入る余地がなくなります。「ここは実装者に委ねる」という判断をAIに伝え、適切に曖昧さを残すことが重要でした。また、不必要な非機能要件などもここにあたります。非機能要件自体は重要ですが、AIに検討させるともっともらしいが根拠のない具体的な数値が入って出てくることは往々にしてあります。実験しないとわからないことは、気をつけるようにだけ書いて具体的な記載は省くようにしました。

今後の展望

現在の仕組みはまだ発展途上です。今後取り組みたいのは以下の点です。

  1. AIからの確認フロー : 現在は「AIが多めに書いたものを人間が削る」というフローですが、AIから人間に質問を投げかけ、対話的に要件を詰めていく仕組みを作りたいと考えています。

  2. 複数案からの選択 : 1つの要件に対して複数の実現案を提示し、その中から選択するというフローも検討しています。

  3. WFサービスへの連携 : WFサービス向けのプロンプトを出力したり、要件を早期に検証するためのコストを下げることを考えています。


エンジニアリングの知見を活かせるPdMを募集しています

Rimoでは、エンジニアリングのバックグラウンドを持つPdMがより創造的に活躍できる環境を整えています。

Claude Codeでのコマンド作成、コードベースを踏まえた要件定義、BigQueryによるデータ分析など、技術的な知見を活かして、新しいプロダクト開発のプロセスを共に作り上げていける方を求めています。

これからのPdMは、単に要件を定義して依頼するだけでなく、AIと協働してプロダクトを牽引する役割が求められます。技術への理解とAI活用は、そのための強力な武器となります。

歓迎する人物像:

  • 要件定義だけでなく、自ら手を動かすことにも意欲的である

  • AIを積極的に活用し、生産性を最大化したい

  • 少人数で大きなインパクトを出すことにやりがいを感じる

  • 技術とビジネスの両面からプロダクトを成長させたい

現在は2名のPdMで20名のエンジニアと連携する、変化に富んだ環境です。その分裁量が大きく、AIを駆使して新しい働き方を実践できる面白さがあります。

募集要項や応募フォームは、https://jobs.rimo.app/ をご確認ください。

ご興味をお持ちいただけた方は、ぜひカジュアル面談でお話ししましょう。


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