近年、AI分野において「オープンウェイト(Open Weight)」という概念が注目を集めています。オープンウェイトとは、学習済みのAIモデルを公開し、誰もが自由に利用できるようにすることを指します。一方、オープンソースはソースコードを公開し、自由な再配布や改変を許可する概念です。
ChatGPTをはじめとしたAIが注目を集め、その元となっているTransformerなどのモデルは、プログラミングの代わりにデータを追加することで性能を向上させることができます。そのためそのモデルを作成したソースコード自体はオープンにしなくても、モデルとその重みと呼ばれるパラメータを公開するだけで価値が出るようになってきました。
今回は、オープンウェイトとオープンソースの違いについて詳しく見ていきましょう。
オープンウェイトとは
オープンウェイトとは、事前学習済みのAIモデルを公開し、誰もが自由に利用、応用できるようにすることです。オープンウェイトの特徴は以下の通りです。
学習済みモデルの公開: 訓練に膨大な時間とコストがかかるAIモデルを、学習済みの状態で公開します。
商用利用の許可: オープンウェイトのモデルは、商用利用を含む幅広い用途で利用できます。
コミュニティによる発展: オープンウェイトのモデルは、コミュニティによる改良や応用が期待されています。
オープンウェイトのモデルは、モデル自体とそのウェイトが公開されているので、継続学習をしたり、ファインチューニングをしたりしてより精度を向上させたり専門性を持たせたり、蒸留をしてより軽量なものを作成したりすることができます。
オープンウェイトのLLM(大規模言語モデル)の代表例として
ChatGPTに利用されているTransformerよりもより高速で性能が良くなるモデルアーキテクチャとされているMambaベースのモデル
オープンウェイトの大規模言語モデルとしては最高性能でGPT-4と比較しても遜色のないアウトプットを出せるとされているもの
などが挙げられます。
オープンソースとは
オープンソース(Open Source)とは、ソフトウェアのソースコードを公開し、誰もが自由に利用、改変、再配布できるようにすることです。オープンソースの特徴は以下の通りです。
ソースコードの公開: ソフトウェアのソースコードを公開し、誰もが自由に閲覧、利用できるようにします。
自由な再配布: オープンソースのソフトウェアは、通常自由に再配布することが許可されています。
派生物の作成: オープンソースのソフトウェアは、誰もが自由に改変し、派生物を作成できます。
基本的にはこのような特徴がありますが、ライセンスにより商用利用が可能か、作者を表示し続けなければならないか、改変後のソースをオープンのままにしないといけないかなどが変わる可能性があります。
LLM(大規模言語モデル)の場合は、オープンソースの場合は学習のさせ方や細かいテクニックが公開されていることが多いです。場合によっては学習に利用したデータも公開されていたりします。
オープンソースのLLMの具体的な例として、X(旧Twitter)でイーロンマスクがClosedになっているOpenAIを揶揄するために公開させたと言われるGrokが挙げられます。
オープンウェイトとオープンソースの違い
オープンウェイトとオープンソースの主な違いは、公開対象と利用目的です。
公開対象の違い
オープンウェイト: 学習済みのAIモデルを公開します。
オープンソース: ソフトウェアのソースコードを公開します。
利用目的の違い
オープンウェイト: AIモデルを利用し、応用することが主な目的です。
オープンソース: ソフトウェアの開発と改良が主な目的です。
ライセンスの違い
オープンウェイト: 多くの場合、商用利用を許可するライセンスが適用されます。
オープンソース: GPL、MIT、Apacheなど、様々なライセンス形態があります。
オープンウェイトの利点と課題
オープンウェイトには、以下のような利点と課題があります。
利点
AIモデルの利用しやすさ: 学習済みのモデルを利用できるため、AIの利用がより簡単になります。
研究と応用の加速: オープンウェイトにより、AIの研究と応用が加速すると期待されています。
課題
モデルの信頼性と安全性: オープンウェイトのモデルの信頼性と安全性を確保する必要があります。
倫理的な問題への対応: AIの利用に伴う倫理的な問題に適切に対応することが求められます。
まとめ
オープンウェイトとオープンソースは、公開対象と利用目的が異なる概念です。オープンウェイトは学習済みのAIモデルを公開し、その利用と応用を促進することを目的としています。一方、オープンソースはソフトウェアのソースコードを公開し、その開発と改良を目的としています。
オープンウェイトは、AIの利用しやすさと研究・応用の加速という利点がある一方で、モデルの信頼性・安全性の確保や倫理的な問題への対応といった課題も抱えています。今後、オープンウェイトがAIの発展にどのような役割を果たしていくのか、注目が集まっています。
最終更新日: 2024 / 6 / 14
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