AI技術の発展により、ビジネスシーンでの活用を検討する人が増えているのではないでしょうか。生成AI技術にはChatGPTをはじめ、さまざまな種類が豊富にあり、適切な技術を選択することで業務の効率化が期待できます。ただし業務内容によって適したAI技術は異なるため、まずはAIの種類や特徴を理解することが重要です。
Microsoftが提供する「Azure OpenAI Service」も生成AI技術の1つであり、高いセキュリティを備えているため、企業や組織での活用に適しています。
本記事では、Azure OpenAI Serviceの特徴や導入方法を詳しく解説します。またChatGPTとの違いについても紹介しますので、自社にAIの導入や活用を検討の方はぜひ参考にしてください。
Azure OpenAI Serviceとは?特徴を紹介
「Azure OpenAI Service」とは、Microsoft Azure上でChatGPTなどのAIモデルを利用できる法人向けのサービスです。
GPT-4oなどのChatGPTを活用したいけれど、機密情報を含むデータを取り扱っているため、データの一時保管に懸念を抱いている企業も多いのではないでしょうか。
Azure OpenAI ServiceであればMicrosoft Azureの高いセキュリティ下でAIモデルを利用できるため、コンプライアンスを重視する自治体や大企業から高い信頼を得ています。通常のChatGPTであれば、OpenAI社が管轄するサーバー内でデータが30日間保管されますが、Azure OpenAI Serviceはデータ保管期間を無しにすることが可能です。そのため、よりデータ漏洩のリスクを下げたい企業に向いています。
また、Azure OpenAI ServiceはChatGPTと同じAIモデルなので、自然言語による質問や相談・議事録作成・コード生成など、幅広いタスクを実行できます。
ChatGPTとは?特徴を紹介
ChatGPTとは、入力した質問や相談に対して自然言語を生成する機能を持った対話型AIサービスです。インターネット環境さえあれば、登録・契約してすぐに利用できます。
ChatGPTは単純なリサーチ業務だけではなく、以下のようなタスクも実行可能です。
文章の要約・添削・翻訳
メール文章作成
コード生成
商品・企画のアイデア出し
議事録作成
業務マニュアル作成
このようにChatGPTは幅広い業務をサポートしてくれるため、うまく活用すれば業務効率化が期待できるでしょう。
関連:ChatGPT最新モデルGPT-4oの使い方を徹底解説!基礎知識から実践的な活用法・コツ・事例も紹介
Azure OpenAI ServiceとChatGPTの違い
Azure OpenAI ServiceとChatGPTの違いは以下のとおりです。
提供元 | Azure OpenAI Service | ChatGPT |
---|---|---|
利用方法 | API連携のみ | API連携・WebUI(実装をしなくてもすぐにチャットを利用可能) |
コスト | 有料 | 無料でも利用可能 |
実装・メンテナンス | 専門的な知識が必要 | 容易 |
セキュリティ | 無料プラン・個人有料プランの場合は企業利用向けではない |
Azure OpenAI Serviceはセキュリティが強固なのが特徴ですが、ChatGPTのように無料かつ実装無しで手軽に利用することはできません。
以下、それぞれについて詳しく解説するので、自社に合うサービスを検討するうえでの材料にしてください。
コストの違い
Azure OpenAI Serviceは使用量に応じた従量課金制を採用しており、大規模なデプロイメントやカスタマイズをした場合、コストも高くなる傾向にあります。
一方のChatGPTは、個人向けの無料版と機能が拡張された有料版を提供しています。有料版は最新モデルGPT-4を搭載しており、より精度の高い対話や画像生成が可能です。
まずは業務内容を整理した上で必要な機能を見極めて、自社の目的や予算に合わせてサービスを選択すると良いでしょう。
実装・メンテナンスの違い
Azure OpenAI Serviceは、REST API・Python SDK、または Azure OpenAI StudioのWebベースのインターフェースを介してサービスにアクセスします。そのため契約やリソースの構築が必要なため利用開始までに時間を要し、専門知識も欠かせません。また、OpenAI社から最新のAPIサービスが提供されても、実際に利用できるのは数週間から数か月かかるケースがあることにも注意が必要です。
一方で、ChatGPTはWebUIも用意されているため、非エンジニアであっても画面操作ですぐにChatGPTとの対話を開始できます。無料で手軽にスタートすることができる点・新機能や最新モデルが早く利用できる点はChatGPTの魅力といえるでしょう。
セキュリティの違い
Azure OpenAI Serviceでは、厳格な基準を持つMicrosoft Azureのセキュリティ機能を利用できます。正当な利用であることを証明できればChatGPTに送ったプロントや会頭の内容のデータを無しにできるため、セキュリティ面でも安心です。
また「ExpressRoute」を利用すれば、インターネットを経由せずに専用回線を通じた閉域接続が可能となります。これにより、データ通信の安全性と信頼性が大幅に向上し、重要なデータや機密情報を扱う企業や自治体から高い評価を得ています。
一方のChatGPTは基本的なプライバシー保護機能は備えていますが、設定によっては入力したデータが学習データとして利用される可能性があるため、利用する際は注意が必要です。
なおデータ保管先ですがChatGPTは米国内、Azure OpenAI Serviceは東日本リージョンのデータセンターを選択できるため、入力したデータを国内に留めることが可能です。2024年10月現在西日本リージョンはAzure OpenAI Serviceの利用ができないため、検討中の方はご注意ください。
※関連:ChatGPTは企業でも安心して使える?セキュリティ対策・情報漏洩対策方法を徹底解説
Azure OpenAI ServiceとChatGPTの共通点
Azure OpenAI ServiceとChatGPTの共通点は、「どちらもGPTモデルを使える」ことです。両社ともOpenAIの技術をベースにした言語モデルを利用して、自然な文脈でのテキスト生成や情報提供が可能です。これにより、さまざまなタスクを効率的に処理し、生産性の向上も期待できるでしょう。
Azure OpenAI Serviceを導入するメリット
Azure OpenAI Serviceの導入を検討しているものの「具体的なメリットがあるのか」など疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。Azure OpenAI Serviceを導入することで、次の2つのメリットが期待できます。
セキュリティ性の高い環境で利用できる
他のツールやサービスと統合しやすい
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
セキュリティ性の高い環境で利用できる
Azure OpenAI Serviceを利用すれば、高レベルのセキュリティ環境で生成AI技術を活用できます。Microsoft Azureのセキュリティは厳格な基準を持っているため、機密性の高い情報を取り扱う企業でも、生成AI技術の導入を前向きに検討できるでしょう。
また通常ChatGPTに入力したデータはOpenAIの学習データとなりますが、Azure OpenAI Serviceであれば学習データとして残さない選択も可能です。
他のツールやサービスと統合しやすい
Azure OpenAI ServiceはMicrosoft Azure上で利用できるため、他のツールやサービスと統合しやすいのも魅力の1つです。例えば、ワークフローを作成できるプラットフォーム「Azure Logic Apps」や、ボットアプリを作成・公開できるサービス「Azure Bot Service」などと統合が可能になります。
これまで利用していたツールやアプリに生成AI機能を追加することで、新たなビジネス価値の創出も期待できるでしょう。
Azure OpenAI Serviceを導入するデメリット
企業にとってメリットが多いAzure OpenAI Serviceですが、以下のデメリットもあります。
無料で利用することはできない
最新モデルが使えるようになるまで時差が発生する場合がある
導入後に「イメージと違う」とならないように、デメリットを理解した上で自社に合った生成AIを選択してみてはいかがでしょうか。それぞれ具体的に解説します。
無料で利用することはできない
Azure OpenAI Serviceは「責任あるAI」という思想に基づいたサービスを提供しています。不正使用や意図しない損害から保護するために多大な投資を行っており、高度な機能と信頼性の代償として従量課金制を採用しています。複雑なモデルを利用する場合はコストが高くなる傾向があるため、予算が限られている企業では生成AI導入の障壁となってしまうケースもあるでしょう。しかし無理に導入する必要はないため、コストと得られるメリットを慎重に比較し、検討してみてください。
最新モデルが使えるようになるまで時差が発生する場合がある
Azure OpenAI Serviceでは、最新のAIモデルがすぐに利用できるとは限りません。OpenAIが新しいモデルをリリースしてから、Microsoft Azure上で利用可能になるまでには、一定の時間差が生じる場合があるのです。
これはAzure OpenAI Service上で「最新モデルが正しく動作するか」「他のリソースと統合できるか」など、企業向けサービスとして必要な調整に時間がかかるためです。Azure OpenAI Serviceの導入を検討する際は、時差を含め余裕を持ってサービスの利用を検討すると良いでしょう。
Azure OpenAI Serviceの導入方法4ステップ
Azure OpenAI Serviceの導入方法は、以下の4つのステップです。
①Azureサブスクリプションを作成する
②リソースを作成する
③モデルのデプロイを実施する
④Azure OpenAI Serviceの利用を開始する
それぞれ順を追って解説するので、Azure OpenAI Serviceの基本的な導入方法について理解を深めておきましょう。
①Azureサブスクリプションを作成する
Microsoft Azureのサービスを利用する際は、以下の2つのアカウントが必要です。
Microsoftアカウント
Azureサブスクリプション
日常的にWordやExcelなどを使用している企業は、Microsoftアカウントを作成済みでしょう。Microsoftアカウントを所有していない場合は、Microsoft公式ページから新規作成してください。
Azureサブスクリプションはさまざまなプランが提供されているので、最適なものを選択しましょう。またAzureサブスクリプションは従量課金制です。契約後にサービスを利用しない場合は料金が発生しません。
なお、事前の「アクセス申請」が必要な時期もありましたが、2023年10月頃から不要になっています。
②リソースを作成する
次にAzure OpenAI Service用のリソースを作成します。おおまかな流れは以下のとおりです。
Azure PortalでAzureサブスクリプションにサインイン
「リソースの作成」→「Azure OpenAI」を検索→「作成」をクリック
「基本」タブのフィールドに必要な情報を入力
ネットワーク セキュリティの構成
構成を確認しリソースを作成する
参考:Azure OpenAI Service のドキュメント|リソースの作成
③モデルのデプロイを実施する
テキスト生成前に、Azure OpenAIの中から利用したいモデルを選択しデプロイ(配置)します。手順は次のとおりです。
Azure OpenAI Studioにサインイン
使⽤するサブスクリプションとAzure OpenAIリソースを選択し「リソースの使⽤」クリック
「管理」から「デプロイ」を選択
「新しいデプロイを作成する」を選択し、フィールドを構成
リストから利用したいモデルを選択
モデルを識別できるようになったらデプロイ名を入力
「作成」をクリックして完了
参考:Azure OpenAI Service のドキュメント|モデルをデプロイする
④Azure OpenAI Serviceの利用を開始する
利用開始前に、先ほどデプロイしたモデルが選択されていることを確認します。導入が正しく完了するとAzure OpenAI Serviceが利用できるようになります。Azure OpenAI StudioやWeb APIでデプロイしたモデルを利用してみましょう。
AI議事録ツール『Rimo Voice』ではAzure OpenAIの利用も可能!
Azure OpenAI Serviceはセキュリティ性が高いが導入コストや時間がかかるため、気軽に使いにくいと感じている方もいるでしょう。その点『Rimo Voice』ではAzure OpenAIにも対応をしているため、セキュリティを担保しながら生成AIを用いた議事録作成が可能です。
文字起こし・要約精度の高さに定評がある『Rimo Voice』は、会議や商談の機会が多く、議事録・報告書作成を負担に感じている企業に特におすすめです。
無料トライアルも実施しているので、ぜひ一度お試しください。
※無料トライアル環境はChatGPTが適用されています。トライアル時からAzureOpenAIをご希望される場合、資料請求申し込み後のメールからお問合せをお願いします。
まとめ:Azure OpenAI ServiceとChatGPTの違いや特徴を正しく理解しよう
企業で生成AI技術を利用する際は、機密情報や個人情報などの漏洩に最も注意しなくてはなりません。Azure OpenAI Serviceであれば、Microsoftの厳格なセキュリティのもとでChatGPTなどの生成AIを活用できるため、企業や自治体でも前向きに検討できるでしょう。
本記事で紹介したAzure OpenAI ServiceとChatGPTの違いや特徴を正しく理解した上で、自社に合う生成AIを導入して、業務効率化を目指しましょう。
最終更新日: 2024 / 10 / 14
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