タイパとは、Z世代を中心に広がっている言葉の1つです。タイパは時間対効果のことであり、プライベートやビジネスシーンなど、幅広い場面で意識されています。
しかし、中にはタイパを知らない方もいるのではないでしょうか。そこでこの記事では、タイパの意味や具体的な使い方、タイパの考えが広がった背景などを詳しく解説します。
記事の後半では、タイパを意識したビジネスの事例を紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
Z世代を中心に使われるタイパ(タイムパフォーマンス)とは時間対効果のこと
タイパとはタイムパフォーマンスの略語で、日本語で時間対効果を意味します。効率を意識する人がよく使う言葉、考え方です。
タイパは限られた時間で、自分がやりたいことに取り組むという行動スタイルにつながっており、Z世代や共働き世帯などを中心に使われています。
なお、時間が短ければ短いほどタイパが良いというわけではありません。たとえ時間が一定かかったとしても、得られた満足感や効果がそれ以上に高ければタイパが良いと言えます。
タイパの言葉の使い方
タイパは、**「タイパが良い」「タイパが悪い」**などの使われ方をします。それぞれの意味は以下の通りです。
意味 | 例 | |
---|---|---|
タイパが良い | 費やした時間に対して得られた効果への満足度が高い | 1分の動画で必要な情報がすべてわかった |
タイパが悪い | 費やした時間に対して得られた効果への満足度が小さい | 情報収集のために30分の動画を見たが、冗長で知りたい情報がほとんど得られなかった |
**「タイパを重視する」との使い方もあり、この場合は「時間を効率よく使えているか」**という意味です。
タイパを重視すると同じ意味を持つ表現には、「タイパ向上」「タイパを意識する」などがあります。
タイパとコスパとの違い
タイパと似ている言葉に「コスパ」がありますが、どちらも異なる言葉で、それぞれの意味は以下の通りです。
タイパ:掛けた時間に対して得られる満足度・効果の高さを評価する言葉コスパ:出たお金に対して得られる満足度・効果の高さを評価する言葉
対象が時間か、お金かの違いがあります。コスパは、相場よりも安く商品を購入できたときに「コスパが良い」と表現できます。
ビジネスシーンにおいては、新たなシステムや設備の導入費用を抑えられたときに使えるでしょう。
タイパとスペパの違い
似ている言葉のもう1つが、スペパです。スペパとは「スペースパフォーマンス」の略語で、空間を効果的に使うという意味です。具体的には、オフィスやお家の空間を効果的に使うときに、スペパが使われます。
テレワークでお家時間が増えたことをきっかけに、スペパの意識が高まり、そのような商品が多く販売されるようになりました。
壁面収納やスリムタイプの棚は、まさにスペパを意識した商品です。
タイパが良いといわれる具体例
タイパが良い=時間に対して得られる満足度・効果が高いという意味ですが、具体的にどのような場面で使われるかわからない方もいるでしょう。ここでは、以下の4つの項目に分けてタイパの具体例を紹介します。
コンテンツのタイパ食のタイパビジネスのタイパキャリアのタイパ
コンテンツのタイパ
コンテンツにおけるタイパの意識は、アプリのダウンロード場所によく現れています。
「スマホに表示される広告からアプリゲームをダウンロードしたことがありますか?」の質問に対して、**50代は10.5%、20代は20%、30代は24%**でした。対して10代は34.3%が広告からダウンロードしています。
これは、タイパを重視するZ世代にとって自分でゲームを探すのは非効率だと感じているからと推測できます。広告から当たりのアプリを見つけられれば、自分で探す手間がないためタイパが高いと言えます。
出典元:https://dream.jp/entmeet/article/66a8735f623061435c02c5f2/
食のタイパ
食のタイパとしては、すでに完成している商品や、短時間で作れる満足度の高い商品などが挙げられます。普段から料理をしている人であれば、時短調理ができる家電やアイテムを利用しています。
具体的には冷凍野菜や、低温調理器といったアイテムです。反対に調理時間を省きたい人は、バランスを意識したお弁当や、コンビニなどのお惣菜が利用されています。
手軽に栄養を摂取できる食品も、タイパを狙ったものです。
ビジネスのタイパ
ビジネスでのタイパでは、限られた時間で業務をこなせるかがポイントです。Excelでの関数利用、Web会議ツールでオンライン会議ができるようにする方法などは、タイパを意識しているといえます。
資格取得や、業務への理解を深めたいビジネスパーソンにとっては、通信講座や書籍要約サービスなどが該当するでしょう。
ビジネスのタイパの意識は、残業時間の削減やワークライフバランスを上げることに繋がります。
キャリアのタイパ
転職活動でも、タイパは意識されています。**「転職活動においてタイパを意識している行動」**という質問に対して、20代はあらゆる場面でタイパを意識して行動しているとの結果が出ています。
40代と比較しても、20代が無意識的にタイパをもとにした行動をしている割合は高いです。このことから、現在の20代は意識的・無意識にかかわらず、タイパに重きをおいて就職活動をしていることがわかります。
出典元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000675.000010591.html
タイパの考えが広がった背景
タイパの考えはZ世代や共働き世帯を中心に広がっていますが、その背景として以下が挙げられます。
IT技術の進歩・デジタル社会化が進んだため急速なトレンドの変化の中で情報収集を求められるため働き方の価値観の多様化
ここでは、それぞれの背景を詳しく解説します。
IT技術の進歩・デジタル社会化が進んだため
現代は、パソコンやスマートフォンなどの電子機器が普及しています。ビジネスシーンにおいてもさまざまな業界がDX化を進めており、今やパソコンやスマートフォンはなくてはならないものです。
これに伴い、誰もが簡単にインターネットにアクセスできるようになり、個人が得られる情報は多くなりました。とはいっても、限られた時間で効率よく情報収集をする必要があります。そうなると、タイパを意識せざる終えません。
ビジネスシーンにおいては新システムを導入したり、DX化を進めたりしていますが、これらもタイパを意識しているからこそといえます。
急速なトレンドの変化の中で情報収集を求められるため
現代はSNSや口コミサイトなどの普及で簡単に情報を得られる一方で、情報発信も容易になりました。実際、ビジネスシーンにおいてはSNSマーケティングやSEOマーケティングなど、企業はさまざまな媒体で情報発信に励んでいます。
ジャンルによっては、一個人がメディアとして情報を発信していることも珍しくありません。そのような背景から、世の中のトレンドも素早く変化するようになりました。
消費者がトレンドの変化に追いつくには、素早い情報収集が必要です。
働き方の価値観の多様化
働き方の価値観の多様化も、タイパに大きく影響しています。今でこそキャリアアップのための転職は一般的となったものの、以前は1つの会社に長く勤めることが前提でした。
さらに、長時間労働が美徳とされている考えもありました。しかし、現在は仕事を定時で切り上げて家庭を大事にしたり、スキルアップのために勉強したりするなど、プライベートを大事にする労働者が増えています。
実際、ワークライフバランスの良さで注目を集める企業は多くあります。このように、労働者側の意識の変化でタイパが注目されています。
ビジネスにおいてタイパを意識するメリット
ビジネスにおいてタイパを意識することには以下のメリットがあります。
業務効率化・生産性の向上が期待できるワークライフバランスが向上するZ世代に企業の魅力としてアピールができる多様な働き方が可能になることで、新しい人材に出会える可能性がある顧客体験の向上
それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
業務効率化・生産性の向上が期待できる
タイパを高めるとは、限られた時間で最大限の成果を得ることです。つまり、あらゆる業務を効率よくこなす必要があります。
これまでよりも短い時間で同じ成果、もしくはそれ以上の結果を出せれば、自ずと生産性は向上します。
業務効率化・生産性の向上が実現できれば、余った時間をより重要な仕事に充てたり、個人の精神的なプレッシャーが減ったりするでしょう。
ワークライフバランスが向上する
限られた時間で与えられた業務をこなすことができれば、残業時間の削減や時短勤務の実現も可能です。
今まで仕事に充てていた時間を趣味や家族のために使えれば、ワークライフバランスは向上します。結果として、従業員の満足度と生産性が向上します。
Z世代に企業の魅力としてアピールができる
効率を重視する傾向のあるZ世代にとって、タイパを意識する企業文化は、彼らの価値観と合う魅力的な職場環境として映ります。
また、タイパを上げたことによって生まれた余裕を、スキルアップや自己啓発に充てられることをアピールすることもできます。Z世代の副業中&意欲あり層は約4割という調査結果もあり、これは大きな魅力となります。
出典元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000107.000029212.html
新しい人材に出会える可能性がある
タイパの意識によって労働時間の削減ができれば、週4日労働や時短勤務、フルリモートなどを実現できる可能性があります。多様な働き方を実現できれば、社員は自分のライフスタイルに合わせた働き方を選べます。
さらに、これまで育児や介護などが理由でフルタイムで働けなかった方も、時短勤務で新しいキャリアを築ける可能性もあります。採用の幅が広がることになるため、企業は新しい人材に出会えるでしょう。
顧客体験の向上
企業がタイパを意識することは、顧客体験の向上に繋がります。タイパの考えが広がった背景でも述べたように、現代は限られた時間で膨大な情報量から必要な情報を探さなければなりません。
そこで企業側が短い時間で満足度の高いサービスや価値の高い情報を提供できれば、タイパを重視する顧客からの注目が集まります。
企業側としても、タイパの高さを魅力に積極的にサービスの訴求をできるようになります。
ビジネスでタイパを意識するデメリット
ビジネスにおいてタイパは重要な考えですが、一方でタイパの意識には以下のデメリットもあります。
費用がかさみがち質の低下のリスク短期的視点に偏る従業員のストレス増加
それぞれのデメリットを詳しく見ていきましょう。
費用がかさみがち
タイパを上げるためには、業務効率化のための新しいシステムを導入したり、移動時間の短縮で交通手段を新幹線や飛行機にしたりする必要があります。
当然、その分費用もかさみます。費用をかければ時間短縮になるものの、結果的にコストパフォーマンスが悪くなる可能性もあり、バランスを取ることが大切です。
質の低下のリスク
タイパを意識しすぎるあまり、仕事の質が低下する恐れがあります。そもそも、仕事の目的は仕事を早く終わらせることではなく、与えられた役割を全うすることです。
しかしタイパを重視しすぎると、作業すべき部分や細部にこだわる工程が省略され、結果として製品やサービスの質が低下する可能性があります。
特に顧客サポートや創造的な業務の場合、時間をかけたからこそ得られる成果もあります。タイパを意識しすぎると付加価値が失われる恐れがあるため、注意が必要です。
短期的視点に偏る
タイパを重視しすぎると、短期的な結果や即効性に囚われる恐れがあります。中長期的な視点で取り組むことができないため、長期的な戦略やビジョンが失われてしまうのです。
具体的なケースとして、目先の成果や効率を優先した結果、将来的に必要となるスキルやプロジェクト投資を疎かにするなどが挙げられます。
ビジネスで成果を得るにあたって、時間がかかるのはよくあることです。目先の結果や効率に囚われず、ときには中長期的な目線で取り組みましょう。
従業員のストレス増加
企業側がタイパを意識すると、従業員側は常にタイムパフォーマンスを求められている、時間に追われているという感覚になることがあります。
その結果、従業員は過度なプレッシャーを感じて、ストレスが増加することがあるでしょう。従業員のストレス増加は、生産性の低下、チームの雰囲気の悪化を招きます。
タイパを意識すると同時に、従業員にとっても働きやすい環境を目指しましょう。働きやすい環境はモチベーションが向上して生産性が上がり、結果としてタイパが良くなります。
ビジネスでタイパを上げる方法
ビジネスでタイパを上げるにはデメリットがあるものの、他要素とのバランスを取れれば大きなメリットを得られます。ここでは、ビジネスでタイパを上げる5つの方法を紹介します。
業務の優先順位をつける集中して業務ができる環境を作るゆとりのあるスケジュールを組む常に完璧を求めないデジタルツールを活用する
それぞれの方法を詳しく解説します。
業務の優先順位をつける
仕事を効率的に進めるには、業務に優先順位をつけることが大切です。あらかじめ業務に優先順位をつければ、いつに何をするべきかが明確にわかり、スムーズに仕事に取り組めます。
何にどのぐらいの時間をかけるべきなのか、何を先に終わらすべきなのかなど、スケジュールの兼ね合いや自分のパフォーマンスを考慮して決めましょう。
集中して業務ができる環境を作る
仕事を早く進めるためには、集中して業務ができる環境を作りましょう。気が散るような環境や、必要な物をすぐに見つけ出せない環境では、生産性が低下してしまいます。
仕事道具は使いやすいものを揃えたり、机の上は常に整理整頓したりして、集中できる環境づくりに励みましょう。いくら労働者のポテンシャルが高くとも、環境整備ができていなければ能力は発揮されません。
ゆとりのあるスケジュールを組む
スケジュールを組む際は、ゆとりを持ちましょう。ゆとりのないスケジュールは、ツールのトラブル、チームメンバーの体調不良が起これば、当初の予定と大きくズレてしまいます。
仮にトラブルが起きたとしても、当初のスケジュール通りに遂行する場合、従業員の負担は大きいものです。仕事の質を低下させず、従業員の負担を増加させないためには、ゆとりのあるスケジュールを組むようにしましょう。
常に完璧を求めない
タイパを高めるためには、常に完璧を求めず70点前後のラインで妥協することも大事です。そもそも、タイパは限られた時間で最大限の成果を出すことであり、100点を出すことが目的ではありません。
完璧を求めて細かい箇所にこだわっていては、多くの時間を費やしてしまいます。計画よりも多くの時間を費やすことは、期限を過ぎる原因にもなりかねません。
求められているクオリティを理解して、限られた時間で結果を出すことに注力しましょう。
デジタルツールを活用する
仕事の効率化には、デジタルツールの活用が効果的です。現在はあらゆる業界でDX化が進んでおり、便利なツールやシステムが多くあります。具体的にはタスク管理ツールや顧客管理システム、ビデオ会議ツールなどです。
実際にこれらを仕事で使ったことがある方も多いのではないでしょうか。デジタルツールの導入にはコストや時間がかかりますが、導入すれば従業員の負担削減、最終的には経費削減につながることもあります。
現にデジタルツールを導入していない企業は、導入を検討してみるのもいいでしょう。
タイパを意識したビジネスの事例
すでにタイパを意識したビジネスは行われており、多くの注目を集めています。ここでは、タイパを意識したビジネスの事例を3つ紹介します。
短い動画が特徴のTikTok隙間時間でいつでも利用できるジムのチョコザップビジネス書が1冊10分で読めるflier
短い動画が特徴のTikTok
ByteDance株式会社では、TikTokを展開しています。TikTokは10代を中心に広がっているアプリで、最大60秒~3分の動画を流すことができます。
短い時間でさまざまなジャンルの動画を閲覧でき、トレンドもすぐに把握できるため、瞬く間に世間に広まりました。会員数は右肩上がりで、有名なSNSであるInstagramを上回る勢いです。
隙間時間でいつでも利用できるジムのチョコザップ
RIZAP株式会社では、月額3,278円(税込)で通い放題のchocoZAPを展開しています。24時間営業で全店舗どこでも通えるうえ、服装は自由です。さらにセルフエステマシンやセルフホワイトニングなど、さまざまなサービスがあります。
従来のジムとは異なり、服装の制限が少なく、受けられるサービスが幅広いため、まさにタイパを狙ったビジネスだと言えます。
ビジネス書が1冊10分で読めるflier
株式会社フライヤーでは、本の要約サービスの「flier(フライヤー)」を行っています。対象者はビジネスパーソンや就活生で、隙間時間を活用してビジネス書・教養書がわずか10分で読めるのが特徴です。
サービスを開始した2013年から会員数は右肩上がりで、2022年には累計会員数が100万人を突破しました。flierを導入する企業も増えており、2022年5月時点では660社以上が導入しているとのことです。
ビジネスでタイパを高めるときの注意点
タイパを高めるのはビジネスで重要なことですが、タイパを優先しすぎるがゆえに他のメンバーの考えを聞き入れなかったり、過程を蔑ろにしたりすることは避けましょう。
そもそも、チームで仕事をする以上、全てが効率良く計画通りに行くわけではありません。当初のスケジュールとは異なり、想定以上の時間を要するケースはよくあります。
そのときにタイパを重視して過程を蔑ろにしたり、周囲の理解を得ずに行動したりするのは、マイナス評価に繋がります。
場合によっては、組織全体の生産性が下がることもあるでしょう。ビジネスにおいてタイパを高めるのは重要ですが、周囲との理解や結果を出すまでの過程も大事にしましょう。
まとめ
タイパとは、タイムパフォーマンスの略語であり、費やした時間に対して得られたものの満足度や効果の対比を意味する言葉です。トレンドの変化が目まぐるしい現代や、働き方の価値観の多様化によって、Z世代を中心に広まりました。
現在は、ビジネスシーンでもタイパが意識されています。有名なTikTokやジムのチョコザップなどは、まさにタイパを意識した事例です。今後のビジネスの成功は、タイパが鍵を握っているといっても過言ではありません。
本記事で紹介した内容をもとに、ビジネスのヒントを掴んでいきましょう。
最終更新日: 2024 / 9 / 9
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