DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を先導する日本企業は、技術革新と業務改革において注目すべき成果を上げています。これらの企業は、業界の枠を超えて革新的なアプローチで市場に新たな価値を提供し、顧客体験を根本から変えることに成功しています。
当記事では、経済産業省による「DX銘柄2023」に選出された企業群を例に、どのようにこれらの企業が変革を遂げ、持続可能な競争力を構築しているのかを解説します。
1. DX企業とは?
DX企業とは、DXを積極的に推進している企業です。DX企業では、データを効果的に活用し、顧客に合わせたパーソナライズされたサービスを提供したり、クラウドやIoT、ロボティクスなどの技術を導入して業務の自動化や効率化を図ることで、競争力の強化と効率的な運営を実現しています。
DXについては以下の記事で詳しく解説しています。
・DX(デジタルトランスフォーメーション)の意味・定義をわかりやすく解説!具体的な方法や成功事例も紹介
2. DX認定事業者とは?
DX認定事業者とは、日本政府がDXを推進するために設けた制度に基づいて、DX推進の準備が整っていると認められた企業を指します。
この認定は、「情報処理の促進に関する法律」に基づいて行われ、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が審査を担当し、最終的な認定は経済産業省が行っています。
認定を受けることで、企業は、金融支援措置として特別利率での融資や信用保証の拡大、税制優遇措置などが受けられるなどのメリットがあります。
企業規模や業種にかかわらず、すべての企業がDX認定の申請を行うことが可能です。特に中小企業にとっては、DXに取り組む際の指針や支援を得る機会となります。
3. DX認定事業者の中からDX銘柄が選定される
DX認定事業者の中からDX銘柄が選定されるプロセスは、日本のDX推進戦略の重要な部分です。
この選定プロセスは、経済産業省が主導し、東京証券取引所に上場している企業の中から特にDXの推進に優れた成果を上げている企業を「DX銘柄」として公表するものです。
DX認定事業者とは、経済産業省が認定する制度を通じて、DX推進の準備が整っていると評価された企業群を指します。これらの企業は、DXに関連する様々な基準や要件を満たしており、デジタル技術を用いたビジネスモデルの革新や業務プロセスの最適化に取り組んでいます。
一方で、「DX銘柄」として選定される企業は、DX認定事業者の中からさらに選ばれ、業種ごとに1〜2社ずつ指名されます。これらの企業は、DXの取り組みにおいて特に顕著な成果を出しており、その実績が企業価値の向上に寄与していると認識されています。
したがって、DX認定事業者からDX銘柄が選ばれることは、企業が市場においてデジタル革新のリーダーであると認識されるための重要なステップであり、企業の競争力強化に直結する重要な戦略的取り組みとなっています。
4. 「DX銘柄2023」認定企業となるための評価項目
「DX銘柄2023」に認定される企業を選定する際の評価項目は、企業がDXをどの程度効果的に進めているかを測るための基準として設定されています。
主な評価項目については、以下の通りです。
4-1. 経営ビジョンとビジネスモデルが構築されている
DXの成功は、強固な経営ビジョンとそれを支えるビジネスモデルから始まります。企業はデジタル化の目的を明確にし、それを実現するための具体的なビジネスモデルを策定する必要があります。
このビジネスモデルは、市場のニーズや技術の進化を踏まえ、持続可能で成長可能なものであるべきです。また、ビジネスモデルの柔軟性も重要で、外部環境の変化に応じて迅速に適応できる能力も評価されます。
4-2.具体的なDX戦略が構築されている
具体的なDX戦略とは、デジタル技術を活用して事業成果を最大化するための計画です。これには、新しい技術の導入計画、データ活用戦略、顧客体験の向上策などが含まれます。
DX戦略は、企業の全体戦略と密接に連携しており、目標達成のためのロードマップとして機能します。
4-3.戦略実現のための組織や制度がある
戦略を成功させるためには、組織や制度が不可欠です。これには、DXを推進する専門のチームや部門の設置、必要なスキルを持つ人材の確保、そしてその人材が効果的に働けるような文化や制度の整備が含まれます。
4-4.戦略実現のためのデジタル技術や情報システムがある
デジタル技術や情報システムは、DX戦略の実現を可能にするための基盤です。これには、クラウドコンピューティング、人工知能(AI)、ビッグデータ分析、サイバーセキュリティの強化などが含まれます。
4-5.戦略の達成度を測るための成果指標が設定されている
戦略の成果を定量的に測定するためには、成果指標が必要です。
成果指標には、売上の増加、顧客満足度の向上、市場シェアの拡大、新規顧客獲得数、製品開発のスピード、オペレーションコストの削減などが含まれ、具体的なビジネス目標に対する進捗状況を示します。
これらの成果指標は、定期的にレビューされ、戦略の調整や改善に活用されることで、企業の持続的な成長とDX戦略の成功を確実にしています。
5. 「DX銘柄2023」に選定された企業一覧
「DX銘柄2023」に選定された企業の一覧は、経済産業省が公表しています。
2023年の選定では、特に優れたDX取り組みを行っている企業として32社が「DX銘柄」として選ばれており、その中で2社が「DXグランプリ2023」に、さらに19社が「DX注目企業2023」として選ばれています。
また、長期にわたり顕著なDX取り組みを展開している3社は「DXプラチナ企業2023-2025」として特別に認定されています。
これらの選定は、各企業のDXに関する具体的な事例や取り組みが評価され、デジタル技術を駆使したビジネスモデルの変革や経営の革新が特に評価される点が特徴です。
選定された企業は、そのDX戦略が顕著な成果を上げており、業界内での競争力強化や成長に寄与しています。
「DX銘柄2023」に選定された企業一覧は以下の通りです。
法人名 | 東証業務分類 |
株式会社大林組 | 建設業 |
清水建設株式会社 | 建設業 |
味の素株式会社 | 食料品 |
旭化成株式会社 | 化学 |
第一三共株式会社 | 医薬品 |
株式会社ブリヂストン | ゴム製品 |
AGC株式会社 | ガラス・土石製品 |
株式会社LIXIL | 金属製品 |
ダイキン工業株式会社 | 機械 |
株式会社IHI | 機械 |
株式会社日立製作所 | 電気機器 |
凸版印刷株式会社 | その他製品 |
大日本印刷株式会社 | その他製品 |
ヤマトホールディングス株式会社 | 陸運業 |
日本航空株式会社 | 空運業 |
ソフトバンク株式会社 | 情報・通信業 |
双日株式会社 | 卸売業 |
三井物産株式会社 | 卸売業 |
アスクル株式会社 | 小売業 |
株式会社丸井グループ | 小売業 |
株式会社りそなホールディングス | 銀行業 |
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ | 銀行業 |
東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社 | 証券、商品先物取引業 |
MA&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社 | 保険業 |
東京海上ホールディングス株式会社 | 保険業 |
株式会社クレディセゾン | その他金融業 |
東京センチュリー株式会社 | その他金融業 |
東急不動産ホールディングス株式会社 | 不動産業 |
プロパティエージェント株式会社 | 不動産業 |
H.U.グループホールディングス株式会社 | サービス業 |
6. DX銘柄企業の取り組み事例を紹介
DX銘柄企業に選定された企業の取り組み事例は、DXを推進する多様なアプローチを示しています。これらの企業は、業務効率化、顧客エンゲージメントの向上、新サービスの開発など、各々の業界においてデジタル技術を活用して顕著な成果を上げています。
選定企業は、AI、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの先端技術を駆使し、企業文化の変革、プロセスの自動化、データドリブンな意思決定を行うことで、ビジネスモデルの再構築を進めています。
DX銘柄企業の取り組み事例については以下の通りです。
6-1. 建設業界
建設業界では、DXが進行中で、革新的な技術を導入して業務プロセスを変革し、新たな価値を生み出しています。
選定された企業は、それぞれ特有の戦略を採用し、建設業界の課題を解決し、業界全体の持続可能性と効率向上に貢献しています。
株式会社大林組
大林組は、建設業界でのDXを積極的に推進しており、建設、不動産開発、グリーンエネルギー事業など幅広い分野で様々な取り組みを行っています。
主要な取り組みの一つに、建設現場でのICTを活用した労働力の省エネや、ハイブリッド及び電動建設機械の導入があります。この取り組みにより、燃料使用量の削減を図るとともに、建設現場の生産性と安全性の向上を目指しています。
さらに、環境対策として、温室効果ガス排出削減目標を設定し、パリ協定に沿った科学的根拠に基づく目標(Science Based Targets、 SBT)を採用しています。これには、建設現場やオフィスでの再生可能エネルギーの使用を増やすこと、また建設機械に代替燃料を使用することなどが含まれます。
清水建設株式会社
清水建設は、DXの取り組みを積極的に進めており、その一環として「Shimz Smart Site」構想を推進しています。これは建設現場のデジタル化を目指すもので、東京の虎ノ門・麻布台地区「カテゴリー1」の都市再開発プロジェクトにおいて実践されています。
このプロジェクトでは、建設管理の生産性を向上させるために、工程管理、物流、作業情報のデジタル化と連携を図っています 。
また、清水建設は19のICTベンダーおよび機器メーカーと協力して、ビルのデジタルトランスフォーメーションを加速させています。これにはDX-Coreデジタル化プラットフォームの機能拡張も含まれ、建物運用システムとしての役割を強化しています。
企業としての広範なデジタル戦略に加え、清水建設はESG(環境・社会・企業統治)管理を推進し、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
株式会社鹿島建設
鹿島建設は、DXを積極的に推進しており、その戦略の一環として、シンガポールにイノベーションセンター「The GEAR」を開設しました。
この施設は、アジア太平洋地域の本部として機能し、持続可能な建築材料、先進的な建築システム、居住者のウェルビーイング、スマートテクノロジーの研究開発の拠点となっています。
また、鹿島は日本の中央区市にある鹿島技術研究所(KatRI)を通じて、建設業界の安全性向上と労働力危機の緩和に寄与する技術開発に注力しています。
この研究所では、災害防止、環境配慮、建築科学など、多岐にわたるイニシアティブを展開しており、その中にはCO2を吸収するコンクリートの開発も含まれます。
鹿島のDX取り組みは、持続可能な成長を支える基盤を強化し、環境、社会、企業統治(ESG)の各分野でのイニシアティブを進めています。
6-2. 不動産業界
不動産業界においてもDXが急速に進展しており、選定された企業は最新技術を駆使して不動産の購入、管理、運用の効率化を図り、顧客体験の向上を実現しています。
東急不動産ホールディングス株式会社
東急不動産ホールディングスは、事業部門間でのデータの統合と一元管理を実現するために、2020年にMotionBoard Cloud、2021年9月にDr.Sum Cloudを導入しました。
これにより、同社の戦略事業、都市事業、住宅事業、ウェルネス事業など、全ての事業部でDr.Sum Cloudを活用し始めており、企業全体でデータが横断的に利用できるようになりました。
また、グループの長期ビジョン「GROUP VISION 2030」の一環として、「DX」と「環境経営」を事業方針の柱と位置づけ、それぞれの分野で社会問題の解決を図りつつ新しい価値を創造することを目指しています。
プロパティエージェント株式会社
プロパティエージェント株式会社は、不動産投資とデジタル技術を組み合わせた革新的なサービスを提供しています。
同社は、DXを推進し、不動産業界での新たな価値創造を目指しており、不動産投資クラウドファンディングサービスや、多様な不動産関連サービスを通じて、投資家に対して資産運用のサポートを行っています 。
6-3. 銀行業
銀行業界では、デジタルトランスフォーメーションが顧客体験の向上、オペレーションの効率化、新しい金融商品の開発に対するニーズを満たすために重要な役割を果たしています。
株式会社りそなホールディングス
株式会社りそなホールディングスは、DXの取り組みを積極的に進めており、その戦略の一環として「りそなデジタルハブ」を設立しました。
この新しい組織は、特に中小企業向けのDXサポートに特化しており、WingArc1stとの協力により、さまざまなITソリューションを一元的に提供するプラットフォームを開発しています。
また、りそなホールディングスはデジタルガレージとの資本・業務提携を強化し、支払いサービスの提供を中心に共同で次世代のフィンテックサービスを開発しています。この提携により、両社の顧客基盤と技術を活用して、多様な顧客ニーズに応える新しい金融ソリューションを提供しています。
これらの取り組みは、りそなグループが「小売りNo.1ソリューショングループ」を目指す戦略の一環であり、DXを通じて金融サービスの質を向上させ、顧客体験を革新することを目指しています。
株式会社福岡フィナンシャルグループ
株式会社福岡フィナンシャルグループは、地域経済の発展と企業価値の向上を目指し、DXに積極的に取り組んでいます。具体的には、金融サービスのデジタル化や、新しい銀行業務モデルの導入を進めています 。
同グループは「みんな銀行」という日本初のデジタル銀行の設立を含め、デジタル技術を活用した様々な革新的な取り組みを行っています。これにより、顧客に対するサービスの質を向上させるとともに、事業の効率化を図っています。
6-4. 小売・流通・卸売業
小売・流通・卸売業界では、DXが消費者体験の向上、供給チェーンの効率化、新しい市場への進出を推進するために重要な役割を果たしています。
株式会社丸井グループ
株式会社丸井グループは、リテイリング、フィンテック、オンラインとオフラインの統合など、多岐にわたる分野でDXを推進しています。
特にフィンテック分野では、エポスカード株式会社を通じて金融サービスのデジタル化に力を入れており、新しい支払いソリューションや顧客体験の向上を図っています。
同グループでは顧客の多様性や包摂性を重視し、持続可能な企業運営を目指しています。これには環境面での取り組みも含まれ、2050年までのビジョンとして、環境と社会的責任を企業経営に組み込むことを掲げています。
三井物産株式会社
三井物産株式会社は、多岐にわたる事業領域でデジタル技術を活用しています。2021年には「DX総合戦略」を策定し、その実行路線を設計しました。この戦略により、約350のDXプロジェクトが検討され、そのうち95件が試験的に実施またはシステム開発に移行し、45件が実際に導入されています。
同社は、サイバーセキュリティ対策も強化しており、グループ全体での情報セキュリティ基準に基づいた運用を徹底しています。この取り組みには、全グループ会社に対する年次のサイバーセキュリティ基準の遵守状況の自己評価や第三者評価が含まれます (Mitsui)。
また、デジタル技術と三井物産独自の専門知識を組み合わせた新たなビジネス創出にも注力しています。例えば、「Forest DX」プロジェクトでは、デジタル技術を利用して森林のCO2吸収量を視覚化し、そのデータに基づいて排出権の生成を行っています。このような取り組みにより、デジタル技術を活用した新規事業を創出しています。
三井物産は、内部能力の向上だけでなく、外部との協業にも積極的であり、例えばソニー関連企業との合弁会社「GAILABO」を設立しています。このような外部との連携により、AIを活用した新しい社会の形成を目指しています 。
トラスコ中山株式会社
トラスコ中山株式会社は、工場用副資材の卸売業を営みながら、DXに積極的に取り組んでいる企業です。同社は「DXプラチナ企業2023-2025」として、経済産業省と東京証券取引所から高い評価を受けています。
トラスコ中山の主なDX取り組みには、基幹システムのリニューアルや、サプライチェーン全体の利便性を高めるためのデジタル活用が含まれます。特に「自動化できる仕事は、全て自動化」というコンセプトのもと、業務効率化を大きく進めています。
その一環として、「MROストッカー」と呼ばれるシステムを導入しており、これは工場の現場に直接、必要な工具を供給するサービスです。このシステムにより、リードタイムの削減と効率的な在庫管理が実現しています。
また、デジタル戦略本部を設立し、デジタル人材の育成やデジタルツールの利用促進にも力を入れています。サプライチェーンの透明化や顧客サービスの向上を目指して、AI技術を活用した見積もりシステムや、購買支援システムの提供も行っています。
6-5. 化学
化学業界では、DXが製品開発、生産プロセスの効率化、環境への配慮など多方面にわたって推進されています。
旭化成株式会社
旭化成株式会社は、「DX Vision 2030」をビジョンとして掲げており、「すこやかなくらし」と「笑顔のあふれる地球の未来」を目指し、デジタル技術を駆使して新たな価値を創造することを目標にしています。
同社のDX取り組みは、マテリアル、住宅、ヘルスケアの3つの領域においてデジタル技術を活用しており、具体的には、データマネジメント基盤を核とし、ビジネスモデルの変革や経営の高度化を進めています。これにより、グループ全体でデジタル技術の活用を進め、多様な人財や技術を最大限に活かしています。
また、旭化成は具体的なデジタル技術の事例として、包装工程管理システムの開発・導入を進めており、これによりスマートファクトリー化を実現しています。このシステムは、記録を紙媒体からデジタルへ移行し、稼働データの自動記録により、管理業務の標準化やリモートでの現場管理を可能にしています。
AGC株式会社
AGC株式会社は経済産業省と東京証券取引所から複数回にわたり「DX銘柄」に選定されており、そのDXの取り組みが評価されています。特に、2020年、2022年、そして2023年と、一貫してDXの取り組みが認められました。
AGCのDX戦略は、ビジネスのデジタル化を積極的に推進し、グローバルな競争力を強化しています。具体的には、オペレーショナル・エクセレンスの達成、コスト削減、リードタイムの圧縮、品質トレーサビリティの向上、そしてサプライチェーン全体の業務プロセス革新など、広範な分野でデジタル技術を活用しています。
また、AGCはクラウド技術の導入を進め、自社のデータセンターを廃止するなど、インフラの最適化にも注力しています。これにより、AWSをフル活用し、基幹業務システムの効率化を図っています。
6-6. 保険
保険業界では、DXが顧客サービスの向上、リスク管理の強化、新しい保険商品の開発に寄与しています。
東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社
東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社は、金融DXに積極的に取り組むリーダーとして知られており、特に、デジタルトランスフォーメーションを戦略的に進めるために、多角的なアプローチを採用しています。
主な取り組みとして、「東海東京デジタルワールド」という独自のDXプラットフォームが展開されており、FinTech機能との融合による新サービスの提供が行われています。
このプラットフォームを通じて、金融サービスの提供だけでなく、地方創生やパートナー企業との連携にも注力しています。これにより、社会経済に対しても積極的に貢献しようとしています。
DX推進の具体的な取り組みとしては、クラウド技術を活用し、業務プロセスの効率化を図ると同時に、コスト削減にもつながっています。
東京海上ホールディングス株式会社
東京海上ホールディングス株式会社は、全社的なDX推進において、特に「全員参加」の方針を採用しています。企業全体でデジタル変革を進めるためには、従業員一人ひとりがデジタル技術の価値を理解し、自身の仕事に活かすことが求められています。
これを支えるために、データサイエンスやAI技術を活用した研修プログラムを設け、事故対応などの保険業務においてもデジタルツールを導入して効率化を図っています。
また、東京海上は、保険商品やサービスの提供方法にデジタル技術を組み込むことで、顧客体験の向上を目指しています。具体的には、AI音声認識システムを導入し、顧客からの電話での問い合わせ内容を自動で分類することで、迅速な対応を可能にしています 。
さらにDXによる業務効率化を進める一環として、事故対応のプロセスをデジタル化し、顧客への迅速なサポートを実現しています。この取り組みにより、従来15分かかっていた事故の初期対応が最短1分で完了するようになりました 。
6-7. 製造業
製造業では、DXが製品の革新、生産プロセスの効率化、およびグローバル市場への適応を加速しています。DX銘柄2023に選定された企業は、最新のテクノロジーを活用して競争力を高め、持続可能な製造を実現しています。
ヤマハ発動機株式会社
ヤマハ発動機株式会社は、経済産業省と東京証券取引所から「DX銘柄」として選定されています。同社はデジタル戦略部を設置し、AIやIoTを含むデジタル技術を活用しています。特に、コネクテッドモーターサイクルの取り組みやERPシステムのグローバル導入を進め、デジタル技術を基盤とした業務改革に注力しています。
また、新たな成長と競争力強化のため「Yamaha Motor to the Next Stage」というDX戦略を展開しています。この戦略では「経営基盤改革」「今を強くする」「未来を創る」の3つの取り組みをリンクさせています。
さらに、デジタル/IT戦略の変革においては、ボトムアップ型からトップダウン型へのシフトを重視し、経営との認識を合わせることによってDXを効果的に推進しています。
ダイキン工業株式会社
ダイキン工業株式会社は、DXを推進する先進企業としてさまざまな取り組みを展開しています。特に、AIやIoTを活用した空調ソリューション事業の加速に注力し、国内外での協創を重視しています。
また、2023年に1500人のAI人材を育成する目標を掲げており、これには大学との連携を通じて専門的な知識を社員に提供する取り組みが含まれます。このような教育プログラムは、技術的負債の削減やセキュリティリスクの管理にも寄与することが期待されています。
加えて、ダイキン工業は化学プラントにおけるDXの推進にも力を入れており、特に非接触センサ技術を使用した異常検知システムの開発に成功し、これにより設備のメンテナンス効率が向上しています。この技術は、製造プロセスの自動化とデータの活用を通じて、さらなるプロセス改善を目指しています。
株式会社小松製作所
建設・鉱山機械の製造で知られている株式会社小松製作所は、DX銘柄として選定され、技術革新に注力している点が評価されています。スマートコンストラクションを推進し、現場のデータを見える化することで生産性の向上を図っています。
また鉱山業務では、無人運行トラックを活用して作業の安全性と効率を高め、これが世界中の多くの鉱山で採用されています。また、AI人材育成プログラムを通じて、社員が高度な技術を学び、実際の業務に活かせるよう取り組んでいます。
6-8. 医薬品、医療機器
医薬品および医療機器業界では、DXが製品開発、臨床試験、患者ケアの質の向上に貢献しています。
中外製薬株式会社
医療用医薬品製造に特化し、特にがん領域や抗体医薬品で国内トップのシェアを誇る中外製薬株式会社は、「DXプラチナ企業2023-2025」として高い評価を受けています。
同社のDX戦略「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」は、デジタル基盤の強化、バリューチェーン全体の効率化、デジタル技術を活用した新薬開発などを柱にしています。具体的には、AI技術を用いて新薬開発の成功率を向上させたり、ウェアラブルデバイスを通じて患者の状態を可視化する取り組みなどが挙げられます。また、デジタル人材の育成にも注力し、全社的なデジタル変革を推進しています 。
第一三共株式会社
第一三共株式会社は、DXにおいて注目される取り組みを進めています。特に、新薬開発プロセスの高度化に力を入れ、データ駆動型のアプローチを採用しています。具体的には、臨床試験データの解析を自動化し、新薬候補の選定と評価を迅速化しています。この取り組みにより、研究開発の効率が向上し、創薬サイクルの時間短縮を実現しています。
また、同社はグローバルな医薬品開発においてもデジタル技術を活用しており、国際的な臨床試験のデータ管理を強化しています。これにより、多国籍にわたるプロジェクトの調整がよりスムーズに行えるようになりました。
株式会社トプコン
株式会社トプコンは、「尖ったDXで、世界を丸く。」というキャッチフレーズのもと、グローバルな視点で社会的課題の解決を目指しており、「DXグランプリ2023」に選ばれたことがその取り組みの評価を示しています。
具体的な取り組みとして、医療(ヘルスケア)分野では、フルオート眼底検査機器を用いたデータをクラウドに集積し、遠隔診断やAI診断を可能にするシステムを展開しています。これにより、眼の病気の早期発見や治療に貢献しています。
農業(食)では、精密な測定技術を活用して農業の自動化を推進し、労働力不足や後継者問題に対応するための技術を提供しています。また、建設(住)分野では、3次元計測データを基に建設機械を自動制御するICT自動化施工システムを構築し、建設プロセスの効率化を図っています。
6-9. 運輸・物流
運輸・物流業界では、DXが配送効率の向上、コスト削減、顧客サービスの改善に寄与しています。
日立物流株式会社
日立物流株式会社は、物流業界のDXにおいて先進的な取り組みを行っています。具体的には、AIを活用して配送ルートの効率化を図り、運送手続きの電子化を推進しています。
さらに、同社では倉庫管理システムを導入し、在庫管理の効率化を図っています。このシステムを利用することで、過剰在庫や欠品リスクを最小限に抑え、業務の効率を大きく向上しました。
日本郵政株式会社
日本郵政株式会社はDX推進のために、2021年から2025年の間に約4300億円を戦略的IT投資に充てる計画を進めています。この投資により、顧客に新たな価値を提供するデジタル化されたサービスの実現を目指しています。
また、日本郵政グループは、新会社「JPデジタル」を設立し、グループ全体のDXを加速しています。この会社は、グループ内のデジタル化を一元的に推進し、様々なサービス改革を行うことが期待されています。
サイバーセキュリティ対策も強化されており、顧客のデータ保護とサービスの信頼性向上に努めています。さらに、3000億円を投じてDXによる事業改革を実施する計画もあり、これにはスマートフォンアプリを通じた手書きのない非接触型のサービス提供などが含まれます。
日本航空株式会社
日本航空株式会社(JAL)は、DX推進の一環として複数の革新的な取り組みを進行中です。具体的には、個々の顧客に最適化されたサービスの提供を可能にするための顧客データ基盤の構築や、MaaS(Mobility as a Service)、空飛ぶクルマ、ドローンなどの新技術を活用した新事業への挑戦などです。
これらの取り組みは、非接触・非対面のサービス強化にも貢献し、新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえた新しい顧客体験の創出に努めています。
さらに、日本航空株式会社は「JAL イノベーションプラットフォーム」を設立し、オープンイノベーションを通じて、社内外の知見を集結してDXを推進しています。このプラットフォームは、IT部門だけでなく、全社的な新たな価値創造に貢献する体制を整えている点が評価されています。
これらの戦略的な取り組みにより、日本航空株式会社はDX銘柄2021に選定されるなど、デジタル化への本格的な取り組みが認められています。
7. DXの推進における新たな波 - AIの活用
DXの推進において、AIの活用はビジネスプロセスの効率化や顧客サービスの向上、意思決定の精度向上など、多方面にわたる革新をもたらしています。
7-1. AIによるビジネスプロセスの自動化
AIの導入により、ルーティンワークの自動化が進み、労力を要する業務が効率的に行われるようになりました。これにより、人的リソースを戦略的な業務に再配分し、企業の生産性向上が期待されます。
関連記事:AI導入で自社業務を効率化しよう!メリットや成功事例について徹底解説
7-2. データ分析と意思決定の支援
膨大なデータを迅速かつ正確に分析し、それを基に戦略的な意思決定を行うことがAIの重要な役割です。これにより、市場の動向を早期に察知し、迅速なビジネスアクションを実現します。
7-3. 顧客サービスの革新
AIを活用したチャットボットや自動応答システムは、24時間365日の顧客サポートを可能にし、顧客満足度の向上を支援します。また、個々の顧客データに基づいたパーソナライズされたサービスの提供も実現しています。
7-4. AIによるコミュニケーションとコラボレーションの強化
リモートワークが普及する中、AIを活用したコラボレーションツールがチーム間のコミュニケーションを支援し、プロジェクトの効率化を図ります。AIが会議の要約やアクションアイテムの抽出を自動で行い、作業の進行をスムーズにします。
8. 日常で発生する会議・議事録作成業務を効率化するなら『Rimo Voice』
会議や議事録作成はビジネスの日常で避けられませんが、人の手で作成するには時間がかかり、しばしば効率が低下する業務です。『Rimo Voice』はこのプロセスを自動化し、議事録作成および共有までのフローを効率化するためのAIツールです。
『Rimo Voice』は音声をリアルタイムでテキスト変換し、重要なポイントを抽出して会議の要約を作成します。これにより、議事録作成の手間を減らし、参加者が議論内容を迅速に確認し、フォローアップを行うことが可能です。
9. Rimo Voiceを実際に導入した企業の事例
Rimo Voiceの導入により、多くの企業が会議の効率化と議事録作成業務の自動化を実現しています。Rimo Voiceを実際に導入した企業の事例をいくつか紹介します。
9-1. AWA株式会社
AWA株式会社は、音楽ストリーミングサービスを提供する企業です。同社ではRimo Voiceの文字起こしツールを導入し、UXリサーチやユーザーテストの感情分析などに活用しています。
インタビュー後すぐに高精度で文字起こしを行い、分析や考察に必要なデータを速やかに提供できるため、チーム内での共有や議論が容易になりました。従来の人力による文字起こしと比較して、コストと工数の大幅な削減に成功しています。
AWA株式会社の使用事例はこちら
一言一句を再現するAI文字起こしをユーザーテストの感情分析に活用
9-2. 井村屋グループ
井村屋グループは、多岐にわたる食品事業を展開している会社です。
同社ではRimo Voiceを役員会議の議事録作成に導入しており、従来の作業時間が半分に短縮されたと報告されています。
この導入により、会議の音声を高精度に文字起こしし、その後の編集作業も簡単に行えるようになったため、業務効率が向上しました 。
井村屋グループの使用事例はこちら
議事録作成時間半減!担当者も「もう業務に欠かせない」井村屋グループ株式会社様
9-3. (公社)日本農業法人協会
公益社団法人日本農業法人協会は、農業生産法人およびその他の農業関連企業を支援する団体です。
同協会では、会議の議事要旨作成のためにRimo Voiceを導入し、会議の内容を正確かつ迅速に文字化することが可能になったことで、以前に比べて議事録の精度が向上したとのことです。
導入前は、数時間に及ぶ会議の音声から議事要旨を作成する際に多くの時間と労力が必要でしたが、Rimo Voiceを使用することで、そのプロセスが効率化されました。
(公社)日本農業法人協会の使用事例はこちら
AIに任せる事で、議事要旨の精度も向上。数時間の会議音声の文字起こしに活用
9-4. 株式会社JECC
株式会社JECCは、コンピューターや情報機器のリースとレンタルを主力業務としている企業です。
同社では、議事録作成の負担を軽減するためにRimo Voiceを導入しました。導入前は議事録の作成に多くの時間が必要で、3人で作業しても半日から一日かかることがありました。特に発言者の話し方に癖がある場合、文字起こしはさらに困難だったそうです。
Rimo Voiceの導入により、以前は手間がかかった議事録作成が、ほんの数クリックで行えるようになり、特に発言者の声がくぐもっていても正確に文字起こしができるようになった点が、非常に良い評価を受けています。
株式会社JECCの使用事例はこちら
「議事録作成の負担を軽減したい」良い意味でのサプライズ!作業時間を50%削減
10. まとめ
経済産業省の「DX銘柄2023」に選ばれた企業を例に、彼らがいかにして変革を遂げ、持続可能な競争力を築いたかを解説してきました。
DX(デジタルトランスフォーメーション)における新たな波として、人工知能(AI)の活用が注目されています。AIはデータを基に迅速な意思決定をサポートし、ビジネスプロセスの自動化と最適化を可能にします。
AI活用で会議や議事録作成を効率化し、企業の生産性を大幅に向上させたい方は、ぜひ『Rimo Voice』をお試しください。
最終更新日: 2024 / 10 / 25
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