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ナレッジマネジメントの事例7選|成功企業に共通する3つのポイントと失敗パターン

「他社がナレッジマネジメントをどう進めたのか、具体的な事例を知りたい」
「社内で情報共有のルールやツールを入れたが、結局使われないまま形だけになった」
ナレッジマネジメントの推進を任され、こうした課題に直面している方も多いのではないでしょうか。
本記事では、製造業から官公庁まで7社の事例を、課題・施策・成果の順に解説します。
事例からわかる共通点と失敗パターン、自社で進めるときの5ステップも紹介するので、何から始めるかを決める材料としてお役立てください。
ナレッジマネジメントとは|社員の知識を組織全体で共有・活用する経営手法
ナレッジマネジメントとは、社員一人ひとりが持つ知識やノウハウを組織全体で共有・活用し、生産性の向上や技術継承につなげるマネジメント手法です。
個人の頭の中にある知恵を、経営資源として扱う考え方だといえます。2018年にはISO 30401(ナレッジマネジメントシステム-要求事項)として国際規格にもなりました。
ここでは、事例を読む前に理解しておきたい前提知識を紹介します。
参考:日本規格協会「ナレッジマネジメントシステムの国際規格 ISO 30401」
暗黙知と形式知|ナレッジマネジメントが扱う2つの知識
ナレッジマネジメントが扱う知識は、暗黙知と形式知の2つに分かれます。この2つを行き来させながら組織へ広げる点が、単なる資料整理との違いです。
2つの知識の違いを、以下の表に整理しました。
種類 | 内容 | 具体例 |
暗黙知 | 経験や勘、コツのように言葉にしにくい知識 | ベテラン営業の「この客先にはこの提案が響く」という感覚、熟練工の「この音がしたら機械の調子が悪い」という判断 |
形式知 | マニュアルや手順書のように文章や図で表せる知識 | 業務手順書、FAQ、過去の対応記録 |
暗黙知は本人の中にあるままでは、ほかの人へ渡せません。そこで、暗黙知を言葉にして形式知へ変え、それを読んだ社員が実践して自分の暗黙知にする循環をつくります。
暗黙知や形式知に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
▶関連記事:暗黙知・形式知とは?違いや変換方法、属人化を防ぐ形式知化の実践法
ナレッジマネジメントが求められる背景
ナレッジマネジメントがいま求められている背景には、働き方の変化があります。
テレワークが定着したことで、隣の席の先輩の仕事を見て学ぶ機会が減りました。加えて、新規採用だけでは業務量に対応しきれない人手不足のなか、社内にすでにある知識を再利用して少人数でも回せる体制が求められています。
こうした変化の結果、知識が個人にとどまったまま失われる状況が起きています。株式会社プロジェクト・モードが2023年10月に実施した実態調査(回答者516名)でも「情報の蓄積はされているが、更新されていない」と答えた層に課題を尋ねた結果、次の2つが上位に挙がりました。
ナレッジ共有が浸透しない、属人化している:50%
退職した際に、スキル・ノウハウが引き継げない:47.2%
資料を貯めたまま更新が止まっている企業では、ナレッジ共有がうまくいかない、引き継ぎが失敗するという事態が起きることが考えられます。
こうした状況で期待されるのが、ナレッジマネジメントです。属人化を解消し、知識を組織の資産として扱う仕組みがあれば、担当者が変わっても業務は止まりません。
出典:PR TIMES「ナレッジ管理に関する実態調査」
▶関連記事:ノウハウ・ナレッジの意味や違いは?共有してビジネスに活かす方法
▶関連記事:ナレッジ経営とは?手法・成功事例を初心者向けにわかりやすく解説【2026年最新】
▶関連記事:ナレッジ共有(ナレッジシェア)とは?属人化を防ぐ完全ガイド&ツール12選
ナレッジマネジメントの成功事例7選|業種・職種別に取り組みと成果を紹介
ここでは業種と職種の異なる7つの事例を紹介します。
企業(業種・職種) | 施策 | 成果 |
1. パナソニック コネクト(製造業・全社) | 社外秘の品質管理630件・11,743ページをAIが参照できる形に整備 | 1年で18.6万時間を削減 |
2. ダイキン工業(製造業・生産技術) | 設備図面を生成AIが読み取れるナレッジグラフに変換し、保全記録と原因分析の知見を学習 | 設備故障の原因と対策を回答する実証実験で、10秒以内・90%以上の回答精度を確認 |
3. dentsu Japan(広告・営業/スタッフ部門) | 45種類のAIエージェントを一つのポータルへ集約 | 2025年に少なくとも10.7万時間を創出 |
4. 安藤ハザマ(建設業・設計/施工) | 設計・施工ノウハウをAIで自然言語処理・自動分類・スコアリング | 人を介さず若手へ伝承する仕組みを構築 |
5. 花王(メーカー・顧客対応/商品開発) | 消費者の声を当日中に入力し、全部門で確認・議論する場を制度化 | 2017年に商品の処方・容器・表示を773事例改善 |
6. 国土交通省(官公庁・公共事業) | NETISへAI検索・生成AIチャットボット・類似技術比較を実装 | 約3,900の技術から候補を絞り込める状態に |
7. エーザイ(製薬業・全社) | 全社員がビジネス時間の1%を患者と過ごし、暗黙知を持ち帰って組織で共有 | 毎年500超のhhc活動をグローバルで展開 |
各事例は、次の4項目も含めながら解説します。
取り組む前の課題
実施した施策
確認できた成果
自社へ応用するときのポイント
業種だけでなく、解決したい課題を自社に近い事例から確認してください。
1. パナソニック コネクト|製造業・全社|自社の社外秘データまでAIに参照させて年18.6万時間を削減

出典:パナソニック コネクト「パナソニック コネクト 生成AI導入1年の実績と今後の活用構想」
パナソニック コネクトは、パナソニックグループのなかで、サプライチェーンや公共サービス向けのBtoBソリューションを手がける企業です。
同社が抱えていたのは、社内にすでにある知識を活かしきれていないという、典型的なナレッジマネジメントの課題でした。品質管理に関する社外秘の文書が630件・11,743ページ分もありながら、社員が必要な情報を探し出せない状態が続いていたのです。
加えて、社員が個別に外部の生成AIを使い始めたことで、社外秘情報が意図せず漏れる「シャドーAI利用」のリスクも生まれていました。
そこで同社は、以下の3つの目的を掲げ、社外秘情報を含む文書を検索・参照できる形に体系化しました。
①業務生産性の向上
②社員のAIスキル向上
③シャドーAI利用リスクの軽減
整理した文書は、社内AIアシスタント「ConnectAI」に読み込ませています。新しくナレッジを書き起こすのではなく、すでにある文書を「探して使える状態」に整えた点がポイントです。
導入後1年間では、国内全社員約12,400人を対象に18.6万時間の業務時間を削減し、アクセス回数は約139.7万回に達しました。その後も利用は拡大し、同社が公表している2024年の削減効果は年間44.8万時間、利用回数は240万回に達しています。
【事例から学べるポイント】
目的を「業務効率化」だけに絞らず、AIスキルの向上とシャドーAI利用リスクの軽減もあわせて掲げた点です。複数の目的を示すことで、幅広い部門が活用する理由を持ちやすくなります。
参考になる企業: 社内資料は蓄積されているものの、必要な情報を探し出せず、社外秘情報をAIで安全に活用したい企業。
2. ダイキン工業|製造業・生産技術|熟練の技を数値化し設備保全の暗黙知までAIで共有

出典:ダイキン工業「ダイキンと日立が協創、工場の設備故障診断を支援するAIエージェントの実用化に向けた 試験運用を開始」
ダイキン工業は、空調機器で世界トップクラスのシェアを持つ総合メーカーです。
同社が2025年に取り組んだのが、設備保全に関わるベテランの暗黙知をAIで共有する仕組みです。
工場設備の故障対応は、経験のある人にしか判断できない、典型的な属人化業務でした。そこで同社は、日立製作所との協創で、工場設備の図面を生成AIが読み取れる「ナレッジグラフ」の形に変換しました。
ナレッジグラフに保全記録と、日立が持つ設備故障の原因分析の知見をあわせて学習させています。
実証実験の結果、10秒以内に90%以上の精度で、設備故障の原因と対策を回答できることを確認しました。ベテランでなければ判断できなかった内容に、誰でもすぐたどり着ける状態を作ることに成功しています。
なお同社は、これに先立つ2017年にも、熟練技術者のろう付け作業を画像解析で数値化する取り組みを別途行っています。感覚に頼っていた技能を、まず数値という共通言語に置き換えた事例です。
【事例から学べるポイント】
設備図面や保全記録、原因分析の知見を組み合わせ、故障対応に必要な情報へ短時間でたどり着ける状態をつくった点です。ベテラン本人へ毎回問い合わせなくても、過去の記録をもとに原因と対策の候補を確認できます。
参考になる企業: 設備の故障原因や対応方法の判断を、経験豊富な担当者に依存している企業。
3. dentsu Japan|広告・営業/スタッフ部門|45種のAIエージェントを一つの入口に集約し年10.7万時間を創出

出典:電通グループ「dentsu Japan、業務特化型AIの活用で、2025年に10.7万時間、2026年に20万時間超の業務時間を創出」
dentsu Japanは、電通グループが定める4つの事業地域(Japan/Americas/EMEA/APAC)の一つとして国内事業を統括する組織で、広告・マーケティング領域を中心に事業を展開しています。
課題として抱えていたのは、専門知識を持つ人材や過去の資料を探す手段が、社員個人の人脈や記憶に頼っていた状態です。
そこで設計したのが、社内の知識に一つの入口からアクセスできるポータル「スマートワークコンシェルジュ(SWC)」です。
営業ノウハウの検索、過去の資料の参照など、45種類の用途をこのポータルに集約しました。社員はどの部署の知識でも、同じ場所から探せるようになっています。
スマートワークコンシェルジュの2025年の年間利用件数は8.4万件に達しました。利用が広がった結果、2025年には10.7万時間の業務創出時間を生み出しています。2026年も4月時点ですでに5.7万時間を創出しており、年間では20万時間超を見込んでいます。
【事例から学べるポイント】
ナレッジの蓄積量を増やす前に「探す入口」を一つに統一した点です。どれだけ知識が社内にあっても、探す場所がバラバラでは使われません。入口を先に決めたことで、社員が迷わずナレッジにたどり着ける導線ができました。
参考になる企業: 営業ノウハウや過去資料、社内の専門人材に関する情報が部署ごとに分散している企業。
4. 安藤ハザマ|建設業・設計/施工|設計施工ノウハウをAIで自動分類し人を介さずに伝承

出典:安藤ハザマ「建設ナレッジシステム」
安藤ハザマは、土木・建築の両分野で事業を展開する準大手ゼネコンです。
同社は、社内における技術の伝承を、建設業だけでなく国内の全産業に共通する課題としてとらえています。設計・施工のノウハウが社員個人に蓄積したままでは、若手が必要なときに参照できません。
そこで構築したのが「建設ナレッジシステム」です。社内や社員個人に蓄積している設計・施工のノウハウを、AIを用いて自然言語処理・自動分類・スコアリングしています。
このシステムにより、ベテラン技術者の持つ技術を経験の少ない若手へ、人を介さずシステムを通じて伝承できるようになりました。社員の誰もが容易に利用できるシステムとして運用しています。
【事例から学べるポイント】
社員へ新たな文書作成を求めるのではなく、すでに蓄積されている設計・施工文書をAIで分類・整理した点です。現場の入力負担を増やさず、若手が必要なノウハウを検索・参照できる仕組みを構築しています。
参考になる企業: 設計・施工ノウハウが社内文書や個人ファイルに散在し、若手への技術継承が進んでいない企業。
5. 花王|メーカー・顧客対応/商品開発|消費者の声を当日中に全社へ回し商品改善につなげる

出典:花王「お客さまの声を活かす取り組み」
花王は、日用品・化粧品・ヘルスケア製品を製造販売する国内大手メーカーの1社です。
同社は、消費者から寄せられた声を受け付けた当日中に全社へ流す仕組みを、1978年から約50年にわたって運用しています。
きっかけは、問い合わせや要望が受け付けた部門だけで完結してしまい、現場に届いた貴重な情報がほかの部門の判断材料にならないという課題でした。
そこで独自の情報共有システム「花王エコーシステム」を構築し、消費者の声を受け付けた当日中に入力する運用にしています。
マーケティングから研究・生産・品質保証まで、商品に関わる各部門の社員が日常的に確認できる仕組みです。さらに、関連部門の責任者が定期的に一堂に会し、消費者の声をもとに商品やサービスの改善点を議論する会議も設けました。
こうした運用の成果は数字にも表れています。
2017年には国内外のグループ会社で品質向上検討会を220回(国内95回・海外125回)実施し、国内グループ会社では商品の処方・容器・表示を773事例改善しました。
【事例から学べるポイント】
消費者の声を「入力する期限」「確認する部門」「改善を議論する場」までセットで設計した点です。情報を集めるだけで終わらせず、商品やサービスの改善へつなげる流れを日常業務に組み込んでいます。
参考になる企業: 顧客の声が受付部門内で止まり、商品開発や品質改善に活かされていない企業。
参考:花王「消費者志向経営自主宣言 2017年活動報告」
参考:花王「花王「令和6年度消費者志向経営優良事例表彰」において、最高賞である内閣府特命担当大臣表彰を受賞」
6. 国土交通省|官公庁・公共事業|約3,900の新技術データベースにAI検索とチャットボットを実装

出典:国土交通省「AIを活用したNETISの新機能を実装しました〜技術検索、チャットボット、類似技術比較の3つの機能改良〜」
国土交通省は、蓄積した新技術(NETIS)のデータベースにAIを実装し、目的に合う候補を絞り込めるようにしました。
NETISには、2026年5月12日時点で約3,900件の新技術が掲載されています。掲載情報が多いデータベースでは、利用者が適用可能な技術を効率的に検索・比較できる仕組みが必要です。
そこで国土交通省は、NETISの利便性を高めるため、AIを活用した3つの機能を実装しました。
AI技術検索:文章で入力すると、表記ゆれや意味的な関連性を踏まえて技術を検索できる
生成AIチャットボット:実施要領やマニュアルを参照し、新技術の登録や活用効果調査表の作成を支援する
類似技術比較:比較したい工法を選択すると、生成AIが評価項目の候補を提示する
改良により、約3,900の技術のなかから、目的に合う候補を効率的に絞り込めるようになりました。
【事例から学べるポイント】
情報を蓄積した後に起きる「必要な情報を探しにくい」という課題に対し、検索・比較機能を改善した点です。表記が完全に一致しなくても、文章の意味をもとに関連する技術を探せる仕組みを整えています。
参考になる組織: 情報の蓄積が進む一方で、登録件数や表記ゆれが増え、利用者が目的の情報を探しにくくなっている企業・官公庁。
7. エーザイ|製薬業・全社|患者や生活者と過ごす時間を業務に組み込み、暗黙知を共有

出典:エーザイ「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」
エーザイは、国内大手の製薬企業です。
製薬業界では、研究開発の知見が研究者個人に閉じやすく、患者が日常で感じている困りごとが現場に届きにくいという課題があります。マニュアルや論文には載らない「患者が本当に困っていること」は、言葉にしにくい暗黙知だからです。
この課題に対し、同社は暗黙知の獲得そのものを全社員の業務に組み込みました。1992年の企業理念制定以来、30年以上にわたって運用しているのがこの仕組みです。ナレッジマネジメントの専門部署「知創部」を設置し、経営に取り入れてきました。
具体的な施策としては、全社員にビジネス時間の1%を患者や生活者と共に過ごすことを推奨しています。
認知症カフェの運営やリンパ系フィラリア症の患者との交流がその場に当たります。現場で感じ取った気づきを持ち帰り、グループやチームで議論を繰り返して憂慮(患者の潜在的な悩み)を抽出する流れです。
こうして抽出した気づきを組織全体で共有し、行動計画に落として実行する活動が「hhc活動」です。毎年グローバルで500を超えるテーマが展開されており、特に成果の大きい活動は年次イベント「hhc Initiative」で発表・表彰されます。部門や国をまたいだ知識共有の場として機能してきました。
【事例から学べるポイント】
患者や生活者と過ごす時間を具体的に示し、現場で暗黙知を得る行動を日常業務に組み込んだ点です。社員が持ち帰った気づきをチームで議論し、行動計画へ落とし込む流れまで制度化しています。
参考になる企業: 顧客や利用者の潜在的な悩みを現場から収集し、商品・サービスの改善へつなげたい企業。
なお、本記事で扱っていないナレッジマネジメントの内容については、ナレッジ経営の記事で解説しています。あわせて確認したい方はこちらもご覧ください。
▶関連記事:ナレッジ経営とは?手法・成功事例を初心者向けにわかりやすく解説【2026年最新】
参考:エーザイ「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」
参考:エーザイ「hhc(ヒューマン・ヘルスケア)にかける当社の思い」
参考:エーザイ「第6章 世界の製薬トップ20へ」
ナレッジマネジメントの成功事例に共通する3つのポイント

ここまで、目的や対象の異なる7つの事例を紹介しました。各社の施策は、AI検索、技能継承、顧客情報の共有、患者との対話などさまざまです。
一方でナレッジを蓄積するだけで終わらせず、社員の行動や業務成果につなげている点は共通しています。
そこでこの章では、ナレッジマネジメントの成功事例に共通する3つのポイントを解説します。
目的と体制・対象を先に決めてから始めている
暗黙知を「測れる形」「探せる形」に変換している
ナレッジ共有を日常業務の流れに組み込んでいる
1. 目的と体制・対象を先に決めてから始めている
ナレッジマネジメントが定着する企業は、ツールを選ぶ前に「何のために」「誰を対象に」「どんな体制で」を決めています。目的と対象が曖昧なままツールを選ぶと、誰が使うのかが定まらず、形だけの取り組みで終わります。
たとえばパナソニック コネクトは、国内全社員約12,400人という対象を最初に決めたうえで導入を進めました。花王も「消費者の声を商品改善に直結させる」という目的を掲げ、当日中に入力するルールと、関連部門の責任者が集まる会議体を先に設計しています。
社内で提案するときも、目的と対象をそろえてからツール選定を進めてください。目的が決まれば集めるべき知識が決まり、対象が決まれば運用する人も決まります。
2. 暗黙知を「測れる形」「探せる形」に変換している
経験や勘をそのまま文章に残すだけでは、量が増えるほど探しにくくなります。ナレッジ共有が進む企業は、暗黙知をAIなどのツールが扱える形に変換しています。
たとえばダイキン工業は、ベテランの作業を数値に変換しました。安藤ハザマは、社内に蓄積していた設計・施工のノウハウを、AIによる自然言語処理・自動分類・スコアリングによって整理しています。前者は「感覚を数値に」、後者は「バラバラな文書をAIが扱える形に」という変換です。
大切なのは、この変換の工程をあらかじめ設計に組み込んでおくことです。「全員でマニュアルを書こう」と呼びかける前に、書いたものをどう扱うかまで決めておいてください。
3. ナレッジ共有を日常業務の流れに組み込んでいる
ナレッジ共有が続く企業は、共有を業務とは別の作業にせず、すでにやっている仕事の流れの中に埋め込んでいます。「共有してください」と呼びかけて専用の入力時間を設けても、日常業務が忙しければ後回しになるからです。
花王は、消費者からの問い合わせに対応するという既存業務の中で、対応内容を当日中にシステムへ入力するルールにしました。
入力のために別の時間を確保するのではなく、対応業務の一部として組み込んでいます。エーザイも、ビジネス時間の1%を患者と過ごす仕組みを業務に組み込み、そこで得た気づきを組織に持ち帰る流れをつくりました。
安藤ハザマは、社員に新しく文書を書かせるのではなく、すでにある設計・施工文書をAIに読ませて整理する方向を選んでいます。
「全員でマニュアルを書きましょう」と指示を出す前に、今の業務のどこでナレッジが生まれているかを見極めてください。そのうえで、業務の流れの中で記録が残る設計にしましょう。
ナレッジマネジメントが失敗する3つのパターン

ナレッジマネジメントがうまくいかないときは、以下のような原因が考えられます。
症状 | 原因 | 対策 |
ツールを入れたのに投稿が増えない | 入力する人・確認する人・更新の頻度が決まっていない | 誰が・何を・いつ入力し、誰が・いつ確認するかを導入前に決める |
マニュアルはあるのに現場が迷う | 作業手順しか書かれておらず、判断の理由が残っていない | 「条件・判断・理由・結果」の型でベテランの判断を記録する |
蓄積は増えたのに誰も見なくなった | 情報が古い、量が多い、検索しても見つからない | 更新担当者と更新周期を決め、参照回数を指標にして整理し直す |
表の内容を、以下で一つずつ詳しく解説します。
1. ツールを入れただけで運用ルールを決めていない
ナレッジマネジメントツールを導入しても、入力・確認・更新の担当が決まっていなければ、情報は増えません。導入直後は使われても、日常業務が忙しくなるにつれて更新が後回しになり、やがてシステムだけが残ります。
帝国データバンクが2026年に実施した「企業の経営課題に関するアンケート」では、経営層・マネジャー5,241人のうち、58.3%が「業務の標準化」を経営課題に挙げました。
この結果からも、担当者ごとに進め方が異なる業務や、部門間で統一されていない運用が、多くの企業で課題になっていることがわかります。
出典:帝国データバンク「企業の経営課題に関するアンケート(2026年)」
一方で、運用ルールを具体的に定めている事例が花王です。同社は、消費者から寄せられた声を当日中にシステムへ入力し、商品に関わる各部門が確認する仕組みを整えています。さらに、関連部門の責任者が定期的に集まり、共有された情報をもとに改善策を議論する場も設けました。
このように、ツールの導入時には「誰が・何を・いつ入力するか」だけでなく、「誰が確認し、どこで活用するか」まで決める必要があります。
▶関連記事:ナレッジ共有(ナレッジシェア)とは?属人化を防ぐ完全ガイド&ツール12選
▶関連記事:【徹底比較】ナレッジ共有ツール16選!無料プラン・料金相場・選び方を解説
2. 手順だけを記録し「判断基準」まで言語化できていない
作業手順だけをマニュアルにまとめても、技能継承が進むとは限りません。想定外の状況が起きたときに、どの情報を見て、どのように判断するかが残っていなければ、経験の浅い社員は対応できないためです。
こうした失敗を防ぐには、熟練者の作業を手順として記録するだけでなく、経験者と初心者の違いを具体的に把握できる形に変える必要があります。
その例が、ダイキン工業と日立製作所によるろう付け技能の可視化です。両社は、熟練技術者と訓練者の作業を比較し、動作や工具の角度・角速度などを数値化しました。言葉だけでは伝えにくい熟練者の動きを、訓練者が確認できる形に変えています。
技能を引き継ぐ際は、作業の順番だけでなく、どこを確認し、正常・異常をどう見分けるかまで残す必要があります。
3. 情報が増えるほど探せなくなり参照されなくなる
ナレッジは、蓄積するだけでは活用されません。資料や議事録が増えるほど保管場所が分散し、どのファイルが最新なのか、どの資料を参照すべきなのかがわかりにくくなるためです。
検索に時間がかかる状態が続くと、社員はナレッジを参照せず、詳しい担当者へ直接質問するようになります。その結果、情報を蓄積しているにもかかわらず、問い合わせ対応の属人化を解消できません。
これを防ぐには、資料を一つの場所へ移すだけでなく、複数の資料や議事録を横断して検索できる仕組みが必要です。また、古い資料と新しい資料を区別し、回答の根拠を確認できる状態にしておくことも欠かせません。
RimoナレッジAIでは、議事録に加えて、PDF・Word・PowerPointなどの社内資料を取り込めます。フォルダの階層も維持できるため、AIが年度や新旧の関係を踏まえて、参照する情報を判断します。
さらに、複数の資料やプロジェクトから質問に合う情報を自動で選び、社内ナレッジをもとに回答が可能です。情報を検索して提示するだけでなく、蓄積した知識を使った資料作成やメールの下書きなどのタスクも実行できます。
このようにナレッジが増えてきた企業では、保管する情報を増やすだけでなく、社員が質問するだけで必要な情報へたどり着き、そのまま業務に活用できる状態を整えることが重要です。
ナレッジマネジメントの仕組みを導入・定着させる手順【5ステップ】

ここでは、対象業務の選定から試験運用、社内への展開まで、ナレッジマネジメントの仕組みを導入・定着させる手順を解説します。
属人化が進んでいる業務を特定する
共有すべき知識の範囲を絞る
保管場所と入力ルールを決める
試験運用の成果を数字にして他部署へ広げる
制度にして回し続ける
各ステップで何をするかを、順に解説します。
1. 属人化が進んでいる業務を特定する
まずは、ナレッジマネジメントを行う業務を一つに選びましょう。経営への影響が大きく、担当者の経験によって成果に差が出ている業務が候補になります。
たとえば、次のような業務が候補に挙がります。
ベテランしか判断できないトラブル対応
新人から同じ質問が繰り返される業務
受注率の高い担当者の商談の進め方
対象を絞るほど、何を記録すればよいかが具体的になります。
2. 共有すべき知識の範囲を絞る
対象業務が決まったら、そのなかで何を共有するかを決めます。すべてを残そうとせず、現場で迷いが生じる場面から優先して選んでください。
ここで欠かせないのが判断基準です。作業手順だけを集めても、現場の迷いは解消されません。「どの条件でどう判断したか」を、手順とセットで残すルールにしておきましょう。
3. 保管場所と入力・更新ルールを決める
共有する知識が決まったら、保管場所、入力担当者、確認担当者、更新時期を決めます。
たとえば、次のように具体化してください。
保管場所:社内Wikiの「顧客対応FAQ」
入力する人:問い合わせに対応した担当者
確認する人:チームリーダー
更新時期:対応完了日の当日中
見直し時期:3か月ごと
使用するツールは、情報量やアクセス権限、既存システムとの連携要件を整理した後に選びます。小規模な試験運用であれば、現在使用している社内Wikiや共有フォルダから始める方法もあります。
4. 試験運用の成果を数字にして他部署へ広げる
ナレッジマネジメントは、最初から全社へ広げず、一つの部署や業務で試験運用します。実際に使うことで、入力の負担や検索のしにくさなど、設計段階では見えなかった課題を確認できるためです。
成果は、「問い合わせ時間が10分短縮した」「質問件数が月30件減った」のように、導入前後の変化で測ります。投稿数ではなく、参照回数や問い合わせ件数を確認し、課題を改善してから他部署へ広げてください。
5. 制度にして回し続ける
最後に、取り組みを制度として運用し続けます。更新担当者と更新周期を決め、古い情報を定期的に見直す仕組みを設けてください。
成果が出た時点で終わりにはしません。定期的に運用状況を振り返り、対象業務を広げるか、指標を変えるかを判断します。担当者が替わっても、誰が管理するかを決めておけば運用は続きます。
導入後にナレッジを業務で活用する3ステップ

前章では、ナレッジマネジメントの対象や運用ルールを決め、社内へ定着させるまでの手順を紹介しました。
ただし、仕組みを整えただけでは、蓄積した情報は業務に活用されません。導入後は、日常業務で生まれる知識を記録し、関連情報と結びつけ、必要な場面で引き出せる状態にする必要があります。
蓄積したナレッジを活用する流れは、次の3ステップです。
日常業務で生まれる知識を記録する
関連する資料や履歴を同じ基盤に集める
蓄積した知識を引き出して業務に使う
1. 日常業務で生まれる知識を記録する
まずは、会議や商談、顧客対応など、日常業務のなかで生まれる知識を記録します。
たとえば会議では、録音データを残すだけでは、必要な情報を後から探すのに時間がかかります。そのため、文字起こしに加えて、要約や決定事項、担当者まで整理されていれば、過去の経緯を短時間で確認できます。
社員に新たな報告書を書かせるのではなく、普段の会話や業務記録からナレッジが残る仕組みにすると、入力の負担を抑えられるでしょう。
2. 関連する資料や履歴を同じ基盤に集める
会議や商談の記録だけでは、判断の背景まで把握できないことがあります。「前回と同じ条件で進める」と記録されていても、その条件を記載した資料が別の場所にあれば、経緯を追えないためです。
そこで、会議記録と関連する資料や履歴を、RimoナレッジAIのようなツールへ取り込みます。
集めるもの | 方法 | 埋まる情報 |
社内資料・ルール | Excel・Word・PowerPoint・PDFの取り込みや、既存システムとの連携 | 会議の前提となる背景情報 |
ベテランの経験 | AIが聞き手になってインタビューし、話した内容を記録する | マニュアルにない進め方や判断 |
チャット・メール | 社内のやり取りの履歴を取り込む | 会議外で交わされた細かい合意 |
すべての情報を一つの場所へ移し替える必要はありません。既存の保管場所と連携し、必要な情報をナレッジAIから横断して参照できる状態をつくることが重要です。
3. 取り込んだ情報を検索・活用する
資料や記録を取り込んだら、取り込んだシステムやツール上で必要な情報を検索します。AI機能がある場合は、知りたいことを質問したり、実行してほしい作業を指示したりすることも可能です。
たとえば営業では、過去の類似案件や失注理由を確認し、次回提案の骨子を作成します。人事・採用では、過去の面接記録から、候補者を評価するときの判断基準を整理できます。
必要な情報を探すだけでなく、提案書の構成や顧客への返信文の作成までつなげることで、蓄積したナレッジを実際の業務に活用できます。
RimoナレッジAIなら蓄積したナレッジを「探せる・活用できる知識」に変えられる

ここまで紹介したように、ナレッジマネジメントでは、情報を蓄積するだけでなく、必要な社員がすぐに探し出して業務に使える状態をつくる必要があります。
RimoナレッジAIは、社内のマニュアルや過去の資料、会議記録などを取り込み、自社の情報をもとにAIへ質問・指示できるサービスです。

たとえば、過去の商談記録や提案資料をもとに次回提案のポイントを整理したり、社内ルールを確認して問い合わせへの回答案を作成したりできます。Sharepointなど既存ツールと連携して、情報を取得することも可能です。
詳しい社員や過去の担当者を探して確認しなくても、必要な情報へ自分でたどり着き、そのまま次の業務へ進みやすくなる点がメリットです。
また、既存の資料や会議記録を活用できるため、ナレッジマネジメントのためだけに社員へ新たな入力作業を増やす必要もありません。
社外秘情報を扱う場合に必要なアクセス制御にも対応しており、権限を持つ社員だけが情報を参照できる環境を整えられます。
「資料は蓄積しているのに探せない」「詳しい人への問い合わせが減らない」という企業は、まず既存の資料や議事録を取り込み、実際の業務上の質問にどこまで答えられるか試してみてください。
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ナレッジマネジメントの事例に関するよくある質問

ここでは、ナレッジマネジメントの事例を調べる過程で挙がりやすい疑問に回答します。
Q. ナレッジマネジメントの取り組みの例は?
ナレッジマネジメントの代表的な取り組みの例を以下にまとめます。
取り組みの例 | 内容 | 効果 |
社内Wikiの構築 | 業務手順やプロジェクトの記録を全員で書き込んで共有する | 担当者が休みのときや引き継ぎのときにすぐ役立つ |
FAQ(よくある質問)や動画マニュアルの作成 | コールセンターや店舗の作業手順をデータや動画にして残す | 新人が早く仕事を覚えられ、質問への対応時間も減る |
営業ノウハウの共有 | 優れた営業のトークや提案資料をデータベースにまとめる | チーム全体の売上アップや顧客対応の品質向上に繋がる |
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Q. ナレッジマネジメントの効果はどのように測れば良いですか?
投稿したナレッジの数ではなく、使われた数で測ってください。指標になるのは、参照された回数と、担当者への問い合わせが何件減ったかです。
新人が独り立ちするまでの期間がどれだけ短くなったかも使えます。投稿数を目標にすると、誰も読まない情報ばかりが増えてしまうからです。
ナレッジマネジメントの事例を参考に自社の知識共有を始めよう
本記事では、ナレッジマネジメントの成功事例を紹介しました。
パナソニック コネクト:社外秘文書をAIが参照できる形に整え、年18.6万時間を削減
ダイキン工業:設備保全の暗黙知をAIで共有し、10秒以内に故障原因を回答
dentsu Japan:45種のAIエージェントを一つの入口に集約し、年10.7万時間を創出
安藤ハザマ:設計・施工ノウハウをAIで自動分類し、人を介さず若手へ伝承
花王:消費者の声を当日中に全社へ回し、773事例の商品改善につなげる
国土交通省:約3,900の新技術データベースにAI検索を実装
エーザイ:全社員が患者のもとへ通い、暗黙知を30年以上組織で共有
共通するポイントは、目的と体制を先に決め、暗黙知を測れる形・探せる形に変え、共有を日常業務に組み込んでいたことです。
とはいえ、これを自社だけで一から仕組み化するのは難しいでしょう。
RimoナレッジAIなら、社内のマニュアルや過去の事例を取り込むだけで「探せる・活用できる」状態を作れます。入力したデータはAIの学習に使われず、ISO27001・ISO27017も取得済みのため、社外秘資料も安心して活用できます。
無料トライアルも用意されているので、まずは自社の資料でどこまで探せるようになるか試してみてください。
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