【業界別】生成AIのビジネス活用事例25選!注意点や成功のポイントも解説

「生成AIの活用事例を知って、自社の業務に活かすヒントを得たい」
「生成AIには具体的にどのような使い方があるのか知りたい」
「導入する前に、注意点も押さえておきたい」
こうしたお悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
本記事では、IT・金融・製造・建設など8つの業界にわけて、生成AIのビジネス活用事例25選を紹介します。
事例から見える活用の共通点や、導入時に押さえておきたい注意点もあわせて解説します。自社での活用を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。

生成AIとは?従来のAIとの違い
生成AIとは、大量のデータから学習したパターンをもとに、自ら新しいテキストや画像、動画などのコンテンツを生み出す人工知能です。
指示を与えるだけで、専門的なスキルがなくてもクオリティの高い成果物を得られます。こうした手軽さから、生成AIはビジネスパーソンの間でも急速に浸透しています。
生成AIと従来のAIの違い
生成AIと従来のAIの主な違いは以下のとおりです。
従来のAI | 生成AI | |
|---|---|---|
できること | タスクの自動化、予測、分類、分析 | 新しいコンテンツの生成 |
応用分野 | 画像認識、音声認識、自然言語処理、医療診断、金融分析など | テキスト・画像・音楽・動画などの生成、デザインなど |
創造性 | 低い | 高い |
従来のAIは、与えられたデータに基づいて分析や予測を行う点が特徴です。創造性は高いとはいえず、新しいコンテンツの生成には向いていません。
一方の生成AIは、データをもとに新しいコンテンツそのものを生み出せます。この「できること」の違いが、応用分野の広さにも表れています。
関連記事:生成AIの種類・モデル一覧!テキスト・画像生成などサービス25選を紹介
生成AIがビジネスで急速に広がっている理由
生成AIがビジネスシーンで広がっている理由は、質問への回答精度が高まり、業務レベルでも導入できるようになったためです。膨大なデータから得た知見をもとに、ユーザーの問いかけに対して的確で迅速な回答を出力できます。
加えて、企業内のさまざまな業務プロセスを効率化できる点も理由の一つです。たとえば、以下のような用途で活用が広がっています。
メールや資料の文面・アウトライン作成
広告デザインの制作
社内データの分析
人的リソースが限られる企業にとっても、生成AIの導入は業務の省力化に直結します。この後の章では、実際にどのような使われ方をしているのか、業界別の事例で見ていきます。
業界別に見る生成AIのビジネス活用事例25選
ここからは、実際に企業が生成AIをどう活用しているのか、8つの業界にわけて25の事例を紹介します。自社と近い業界・規模の事例から、自社での活用イメージを膨らませてみてください。

【IT・Web業界】生成AIのビジネス活用事例4選
IT・Web業界では、顧客対応から広告制作、社内の情報活用まで、幅広い場面で生成AIの活用が進んでいます。
1. AIアシスタントで購買促進機能を提供|株式会社メルカリ
株式会社メルカリは、フリマアプリ「メルカリ」内で、生成AIと大規模言語モデル(LLM)を活用したAIアシスタント機能「メルカリAIアシスト」の提供を開始しました。出品や購入といったユーザーの行動をサポートし、購買意欲の向上を目的としています。
注目すべきは、売れ残り商品の改善提案機能です。一定期間売れていない商品について、AIが内容を分析し、以下のような改善案を提示します。
商品サイズ
購入時価格
おすすめの商品名
出品者はAIの提案を活用することで、出品作業の手間を減らしつつ販売チャンスを高められます。同社は今後も、購入や出品をサポートする機能など生成AIを活用した機能の拡充を進める方針を示しています。
参考:メルカリ、生成AI・LLMを活用してお客さまの最適な行動を促す『メルカリAIアシスト』の提供を開始
2. 広告文章作成への活用で社内の人手不足を解消|株式会社イーエムネットジャパン
インターネット広告を中心にデジタルマーケティング支援を行う株式会社イーエムネットジャパンでは、マーケティング手法の多様化が加速し、担当者一人あたりの業務範囲が拡大していました。社内デザイナーの退職もあり、クリエイティブ制作リソースが不足していたといいます。
そこで、以下の業務に生成AIを活用しています。
GoogleやYahoo!のリスティング広告で使う広告文の作成
ターゲットペルソナの作成
人が作った広告文とAIが作った広告文を同時に入稿してA/Bテストを行い、インプレッション数やクリック数、コンバージョン数にどう影響するかを検証していく方針です。社内のリソース不足の解消と業務効率化を同時に進めることを狙っています。
3. 文章・資料作成などの業務への活用で2万時間以上の業務時間を創出|株式会社LIFULL
株式会社LIFULLは、経済産業省が定めるDX認定事業者として、自社内での生成AI活用を推進してきました。社内活用を促進するため、以下の取り組みを行っています。
社内用ツールの構築
機密情報保護に配慮しながら社内の疑問点を解決
部門ごとに生成AI活用推進リーダーを設置
従業員649名を対象とした調査では、71.8%にあたる466名が「生成AIを活用して業務効率化できている」と回答しました。なかでも「文章・資料の作成/編集/添削」での活用が最も多く、6割近くの従業員が生成AIを利用しています。
さらに、従業員の活用度を定期的に診断し、活用度の低い従業員にはサポートプログラムを提供。活用度の高い従業員は表彰し、優良事例の共有とモチベーション向上につなげています。
こうした取り組みの結果、半年間で20,732時間もの業務時間の創出に成功しました。
参考:LIFULL、生成AI活用による業務時間創出の取り組み
4. 広告クリエイティブの制作を自動化|株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントは、デジタル広告事業において、生成AIを活用した広告クリエイティブの自動生成機能を開発しました。従来、商品画像の撮影には多くの時間と費用がかかっていましたが、シチュエーションと商品画像の組み合わせを自動生成できるようになっています。
撮影に必要な機材やセット、ロケーションを用意せずに、高品質な商品画像を効率的に制作できるようになりました。
また、生成した商品画像と効果予測AIを組み合わせることで、広告効果の高いバナー制作をさらに効率化できると期待されています。
参考:サイバーエージェント、AI活用の広告クリエイティブ自動生成

【金融・保険業界】生成AIのビジネス活用事例3選
金融・保険業界では、社内問い合わせ対応や事務手続きなど、正確性が求められる業務での活用が進んでいます。
1. 生成AIの活用で事務手続きの業務効率化|株式会社みずほフィナンシャルグループ
株式会社みずほフィナンシャルグループは、生成AIを活用した社内向けチャットサービス「Wiz Chat」の提供を開始しました。業務効率化と新たなイノベーションの実現を目的としています。
注目すべきは、全社員が利用できる環境を整備した点です。社内データに基づき、以下のような業務支援を実現しています。
資料作成や文章の要約
社内規定に関する問い合わせ対応
各種業務のアイデア創出
社員が業務の中でAIを活用した結果、2,000件超のアイデアが集まる社内公募も実施されました。活用方法を社内で共有する動きも進んでいます。
参考:みずほフィナンシャルグループ「生成AI活用で、業務効率化と新たなイノベーションを実現」
2. AIチャットボットの導入で社内問い合わせを削減|SBIホールディングス株式会社
インターネットバンキングを中心にデジタル金融サービスを展開するSBIホールディングス株式会社は、生成AIを活用した社内向けチャットボットの運用を開始しました。グループ会社で先行導入されています。
以下の分野で生成AIチャットボットを活用し、問い合わせ対応を自動化しています。
人事制度や福利厚生に関する質問への回答
IT機器の操作方法やトラブルシューティング
社内マニュアルなどを参照した正確な回答が可能になり、業務効率化と満足度向上への寄与が期待されています。
3. 自動音声による支払い案内で業務効率化|株式会社クレディセゾン
株式会社クレディセゾンは、支払い案内業務において自動音声システムを活用しています。入金案内業務の効率化を図るため、以下の取り組みを行っています。
自動音声による支払い案内の実施
SMS(ショートメッセージサービス)による案内
発信元を明示した確実な連絡
これらの取り組みにより、オペレーターの業務負荷を軽減しながら、顧客への確実な連絡を実現しています。24時間365日の対応が可能になった点も特徴です。
人手による対応が必要な複雑な案件には、専門のオペレーターが対応する体制を維持しています。支払い案内業務の効率化により、オペレーターがより付加価値の高い業務に集中できる環境が整いました。
参考:クレディセゾンのデジタルトランスフォーメーション加速に向けたIT戦略

【製造業界】生成AIのビジネス活用事例3選
製造業界では、設計や研究開発、現場改善のノウハウ活用など、専門性の高い領域での活用が特徴です。
1. 電気シェーバーの新構造のモーター設計に活用|パナソニック ホールディングス株式会社
パナソニックホールディングス株式会社は、電気シェーバーの新モーター開発において生成AIを活用しています。従来の設計手法では実現が難しかった構造の探索が目的です。
AIが膨大な設計パターンを生成・評価できる点が特徴で、以下のような設計案を自動的に提案します。
従来にない磁石配置パターン
新しいコイル巻き方の組み合わせ
最適な材料構成の提案
設計者はAIが生成した設計案から有望なものを選び、詳細設計に進められます。勘や経験に頼っていた工程をAIが担うことで、これまで見つけられなかった構造にたどり着ける点が価値になっています。
参考:キッチンから空港、新素材開発まで。パナソニックグループのAIが社会を“丸ごと”変える
2. 自然言語指示によるロボットの制御|オムロンサイニックエックス株式会社
最先端技術の研究開発を行うオムロン サイニックエックス株式会社は、京都大学、東京工業大学、奈良先端科学技術大学院大学と共同で、自然言語による指示でロボットを制御する研究プロジェクトに取り組んでいます。プログラミング知識がない現場作業者でも、ロボットを柔軟に活用できることが目的です。
以下の技術開発に取り組み、ロボット制御の革新を目指しています。
作業の目的から必要な動作を生成するアルゴリズム開発
人と異なる身体性を持つロボットへの動作変換技術
たとえば「ニンジンの皮をむくときのピーラーの当て方」のような、道具の使い方や力加減までロボットが扱えるようにすることを目指しています。熟練者に依存しない生産現場の実現が狙いです。
参考:オムロン サイニックエックス、京大、東工大、奈良先端大と、ロボット制御に関する共同研究開始
3. 生成AIによるカイゼンノウハウのアドバイス|旭鉄工株式会社
旭鉄工株式会社は、製造現場の改善活動において生成AIを活用したシステムを導入しました。長年蓄積したカイゼンノウハウを効果的に活用するため、以下の取り組みを行っています。
横展アイテムリストのデータベース化
生成AIを活用したカイゼン手法の提案
過去の改善事例の検索と適用
これらの取り組みにより、カイゼンのサイクルが大幅に短縮され、ノウハウの共有と活用が進みました。IoTシステムとの連携により、データに基づいた改善活動も実現しています。
導入の結果、年間で数億円規模の労務費削減と、大きな電力消費量削減を達成したと報告されています。
参考:MONOist「ChatGPTで製造現場カイゼンを簡単に、過去事例や注意点を引き出す生成AI活用事例」

【建設業界】生成AIのビジネス活用事例3選
建設業界では、問い合わせ対応の一元化や技術情報の検索、完成イメージの共有など、現場の負担を減らす活用が目立ちます。
1. AIヘルプデスクの活用で18,000人の問い合わせを一元化|大和ハウス工業株式会社
大和ハウス工業株式会社は、約18,000人の従業員からの人事関連の問い合わせを一元管理するため、AIヘルプデスクを導入しました。
これまでは全国の総務担当者や人事部が問い合わせに対応しており、担当者のリソース不足で相談時間の確保が課題でした。導入の結果は以下のとおりです。
バーチャルな受付窓口・管理機能を整備し、対応状況の管理が可能になった
対話データを蓄積してナレッジ化し、AIによる回答も可能になった
これにより、問い合わせ対応の効率化と、従業員が働きやすい環境の提供を実現しています。
参考:大和ハウスがAI ヘルプデスク for Microsoft Teams を導入、18,000人の問合せの一元化と対話データの資産化に着手
2. 生成AIを使った専門技術検索システムを開発・利用|大成建設株式会社
大成建設株式会社は、セキュリティ対策が施された環境下で、生成AIを利用した専門技術検索システムを開発しています。
同社にはこれまでに蓄積した技術データやノウハウが多くあるものの、必要とする情報を検索し信頼性の高い情報を抽出するのに時間と労力がかかっていました。そこで、以下の取り組みを進めています。
専門技術書検索システムの開発
信頼性の高い社内書類や資料から関連性の高い情報を選別・抽出
生成AIの導入により、専門知識が必要な技術に関する質問に対して、信頼できる情報をすぐに得られるようになりました。
3. 画像生成AI技術でリノベーション後のイメージを作成・提供|株式会社mign
株式会社mignは、建築・土木領域で先端技術を活用したソフトウェア・ハードウェア開発に取り組む企業です。
建築の設計プロセスでは、設計者がクライアントへのヒアリングをもとにイメージ画像を作成し、フィードバックを受けて修正を重ねるのが一般的です。ただし、言葉で伝えたイメージと実際にできたイメージが異なり、手戻りが発生する課題がありました。
そこで、画像生成AIの技術によってインタビューからイメージ作成までの一連のプロセスを置き換えました。ユーザーが部屋の雰囲気や色合いを文章で記載するだけでイメージ画像を生成でき、認識の齟齬が起こりにくくなっています。
参考:画像生成AIによってリノベーション後のイメージを即座に作成できるソリューションをリリース

【小売業界】生成AIのビジネス活用事例3選
小売業界では、需要予測やクリエイティブ制作、店舗運営のサポートなど、商品と現場の両面での活用が進んでいます。
1. 生成AIで商品の課題を分析・需要を予測|株式会社セブン&アイ・ホールディングス
小売業大手の株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、マーケティング面で生成AIの活用に取り組んでいます。
課題分析および対策案の検討に生成AIを活用
生成AIに課題を質問すると、原因と対策を提案してくれる
分析の専門家がいない店舗でも、売上が落ちた要因や打ち手を生成AIに尋ねて確かめられる状態を目指しています。データを現場で使えるようにすることが狙いです。
参考:セブン&アイが推進する生成AIを用いたデータ活用とは?
2. 画像や動画・ナレーション・音楽を生成AIで制作|株式会社パルコ
ファッションビルなどを運営する株式会社パルコは、生成AIを駆使した広告制作に取り組んでいます。「HAPPY HOLIDAYSキャンペーン」という広告では、トップクリエイターとタッグを組み、グラフィック・ムービー・ナレーション・音楽のすべてを生成AIで制作しました。
ポイント
実際のモデル撮影は行わず、プロンプト(生成AIに対する指示)から構成
人物から背景に至るまで幻想的な世界観を作り上げた
動画作成ではいくつかの生成AI技術を組み合わせ、独特の空間を演出
女性ナレーションや音楽も生成AIで作成
生成AIという最先端技術とトップクリエイターが共同して広告を制作する、挑戦的な試みとなりました。
参考:株式会社パルコ「HAPPY HOLIDAYSキャンペーン」
3. 店長業務をサポートする生成AI搭載アシスタントでスピーディーな対応を実現|株式会社ファミリーマート
株式会社ファミリーマートは、店舗運営に必要な情報を提供する人型AIアシスタントを導入し、店長業務をサポートしています。
これまで業務マニュアルは店舗に設置するコンピューターで検索し、店長不在時には電話で問い合わせる必要があるなど手間がかかっていました。そこで、業務マニュアルの音声検索を可能にする生成AI搭載アシスタントを導入しました。
音声検索による店舗オペレーション業務の負担軽減
過去の施策情報などを確認しやすくなった
情報の有効活用による販売計画・売り場づくりの効率化
同社は導入店舗を拡大し、店舗の省力化とスピーディーな情報提供を売場づくりに活かす方針を示しています。

【食品・飲料業界】生成AIのビジネス活用事例3選
食品・飲料業界では、ブランド体験の創出から研究開発、社内の作業時間削減まで、幅広い場面で生成AIが使われています。
1. 生成AIによるブランド体験を提案|日本コカ・コーラ株式会社
日本コカ・コーラ株式会社は、AI画像生成ツールを活用したプラットフォーム「Create Real Magic」を一般公開し、AI技術を活用した消費者との関係構築に取り組んでいます。
利用者はテーマ・シーン・スタイルを選び、自分の言葉を添えてクリスマスカードを作れます。同じツールは、渋谷スクランブル交差点の屋外広告の制作にも使われました。
生成AIを用いて消費者に新しい体験を提供するアプローチに重点を置きつつ、ブランドの信頼と信用を築き上げています。
参考:誰でも「クリスマスカード」作れる画像生成AIツール、日本コカ・コーラが公開 自社の広告制作にも使用
2. 開発関連データの検索の手間を効率化|アサヒビール株式会社
アサヒビール株式会社は、日本マイクロソフト株式会社のAzure OpenAI Serviceが提供する生成AIを用いた社内情報検索システムを試験導入しています。
このシステムでは、社内で保有する膨大な資料やデータを一括で検索できます。生成AIが要約された状態で情報を提示してくれる点が特徴です。
同社は将来的に、グループ社内に点在する技術情報を集約・整理し、効率的に取得しやすくすることで、知見を生かした商品開発の強化や業務効率化を目指しています。
参考:アサヒビール株式会社
3. 全社での生成AI活用で年間3万時間超の作業工数削減を見込む|日清食品ホールディングス株式会社
日清食品ホールディングス株式会社は、社員の業務効率を高めるため、対話型AI「NISSIN AI-chat」を開発しました。全社員が業務で日常的に使えるように設計されている点が特徴です。
情報収集・要約・文書作成など多様な用途に対応
営業部門(NSS営業BS部)だけで年間25,120時間の削減を見込む
全社18部署の合計では、年間32,591時間の作業工数削減を見込むと公表されています。
参考:日清食品ホールディングス「生成AI活用の取り組み」(2024年3月14日 IR説明会資料)

【医療業界】生成AIのビジネス活用事例3選
医療業界では、医師・看護師の事務作業の負担軽減や、患者説明の質向上を目的とした活用が進んでいます。
1. 日本語大規模言語モデルの活用で作業時間を平均47%削減|東北大学病院
日本電気株式会社(NEC)と東北大学病院は、医師の働き方改革に向けて、生成AIの日本語大規模言語モデル(LLM)を活用し、電子カルテなどの情報をもとに医療文書を自動作成する実証実験を実施しています。
電子カルテの情報を時系列に整理
治療経過の要約文章を自動生成
要約文章を電子カルテの内容に関連づけて表示
これにより、紹介状や退院サマリーなどの要約文を新しく作る場面で、作成時間が半分(平均47%減)になったと報告されています。
参考:NEC、東北大学病院、橋本市民病院、「医師の働き方改革」に向けて、医療現場におけるLLM活用の有効性を実証
2. 入院患者の情報管理業務を短時間で完了できる生成AIの開発|社会医療法人財団 石心会 川﨑幸病院
社会医療法人財団 石心会 川﨑幸病院は、株式会社AI Tech Solutionsに、生成AIを活用した「退院サマリーシステム」の開発を依頼しました。医師や看護師が事務作業に費やす時間を短縮し、医療現場の人手不足解消を狙っています。
患者の経過記録を生成AIが要約して退院サマリーを自動作成
生成AIは院内独自の用語にも対応
人手で作成すると時間がかかる退院サマリーを、生成AIを活用したシステムで大幅に効率化できる見込みです。
3. 患者への疾患説明に生成AIの利用を開始|大阪国際がんセンター
大阪国際がんセンターは、日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)などと連携し、乳がんの患者に対する対話型疾患説明生成AIの実運用を開始しました。
これは、AIアバターと生成AIチャットボットを組み合わせた双方向型の会話システムです。受診前に患者がQRコードからアクセスでき、自由なタイミングで疾患の説明動画の視聴やチャットボットへの質問が可能になります。
生成AIによるシステムの導入により、説明と同意取得に要する時間の30%軽減を目指しています。
参考:「AI創薬プラットフォーム事業」の共同研究において、患者への対話型疾患説明生成AIの運用を開始

【教育業界】生成AIのビジネス活用事例3選
教育業界では、社内活用の検証から生徒への個別指導まで、幅広い形で生成AIが取り入れられています。
1. 業務効率化や商品開発に向けた技術活用の検証|株式会社ベネッセホールディングス
教育・介護を中心にサービスを提供する株式会社ベネッセホールディングスは、社員が安全な環境でAIチャットサービスを検証できるよう、クラウド上で稼働する社内AIチャット「Benesse GPT」を開発しました。
セキュリティ面に配慮し、外部に情報が漏洩しない仕組み
業務効率化や技術活用の検証などができる
同社は今後、AI活用についてさまざまな角度から議論し、サービス自体の検証も重ねながら、社内AIチャットを継続的にバージョンアップしていく方針です。
参考:社内AIチャット「Benesse GPT」をグループ社員1.5万人に向けに提供開始
2. 生成AIを活用して生徒への個別アドバイス|株式会社学研メソッド
株式会社学研メソッドは、生徒一人ひとりに最適な学習環境を提供するため、学研オリジナル学習システム(GDLS)に生成AIを組み合わせたサービスのベータ版提供を発表しました。
同システムでは、生徒の学習履歴や理解度に応じたアドバイスやフィードバックを発信できます。一人ひとりに適した情報を与えることによる学習効果向上が目的の一つです。
同社は、生徒が毎日ログインする習慣を促すことを目指しており、それによってさらなる学習効果の向上を図る方針です。
参考:株式会社学研メソッド
3. 生成AIを利用した自主学習支援システムの導入|東洋大学
東洋大学情報連携学部は、以下のような目的のもと、全学生が生成AIを使える環境を整えるAI利用教育システムを開発・導入しました。
生成AIを使った自主学習を可能にし、学生の教育効果向上を目指す
生成AIを利用したシステム開発のスキルを学ばせる
このシステムの導入は、以下のようなメリットをもたらしています。
学生がAIを活用して自らの力で疑問を解決し、理解を深められる
教員は学生の利用状況を追跡し、進捗状況を確認できる
これにより、生成AIを活用した新しい学習のやり方を試行錯誤できる環境を整えています。
参考:INIAD(東洋大学情報連携学部)全学生向けにGPT-4を活用させる革新的な教育システム導入
事例から見える、生成AIを活かす企業の共通点
25の事例を業界横断で見ると、いくつかの共通するパターンが見えてきます。事例をただ眺めるだけでなく、この共通点を押さえることで、自社にどう当てはめられるかが具体的にイメージしやすくなります。

業種によって刺さる理由が違う
生成AIの導入理由は、業種によって重視するポイントが異なります。たとえば建設業界では、効率化そのものよりも「言った言わない」を防ぐ証拠づくりや、工期遅延・説明責任といったリスク管理の観点が導入の決め手になりやすい傾向があります。
製造業界では、専門用語や技術データへの対応力が選定の分かれ目になりやすいのが特徴です。旭鉄工の事例のように、長年蓄積したノウハウをどれだけ正確に扱えるかが、現場での定着を左右します。
小売・食品業界では、需要予測やクリエイティブ制作など、マーケティング領域での活用が目立ちます。自社の業界でどの切り口が刺さりやすいかを考えながら事例を読むと、参考にしやすくなります。
機能ではなく具体的な業務・成果物から始めている
紹介した事例の多くは「生成AIで業務効率化する」という抽象的な目標ではなく、「退院サマリーを自動作成する」「広告文を作成する」といった、具体的な業務や成果物を起点に導入を始めています。
対象を絞り込むほど、現場は「自分たちのどの作業が楽になるのか」を具体的にイメージできます。導入効果も測定しやすくなり、社内での説明もしやすくなる傾向があります。
いきなり全部門・全業務への展開を目指すのではなく、まずは1つの具体的な業務から始めている点は、業種を問わない共通点といえるでしょう。
AIに任せる範囲を線引きしている
事例をよく見ると、AIに任せているのは「下書き・提案・一次分析」までで、最終的な判断や確認は人が行う設計になっているケースがほとんどです。メルカリの改善提案機能も、みずほのチャットサービスも、AIが提示した内容を人が最終的にチェックする前提で運用されています。
会議・打ち合わせの場面でも、同じ構造が当てはまります。生成AIは議事録の作成や資料のたたき台づくりまでは得意です。
一方で、会議で決まったことを実際に関係者へ共有し、次のアクションにつなげるところは、多くの職場でいまも手作業のまま残っています。この「決まった後」の工程まで自動化を広げる動きとして、Rimo合同会社のRimo Actionsのように、議事録作成からタスクの洗い出し、資料の下書き作成、関係者への共有までを一つの流れで担う機能も登場しています。
▼議事録から次にやることをAIが抽出する画面(Rimo Actions)

AIに任せていいのは「書く」こと、任せてはいけないのは「決める」ことと「聞く」ことという線引きは、会議領域の自動化を検討するときの一つの目安になります。
生成AIを導入するときの注意点
生成AIは業務効率化や生産性向上などさまざまなメリットがある一方で、導入時には注意すべき点もあります。ここでは3つの注意点と対策を解説します。
著作権などの権利侵害に注意する
生成AIが生み出したコンテンツを商用利用する際は、著作権や商標権、パブリシティ権など、さまざまな法的権利への配慮が欠かせません。AIサービス提供元が「商用利用可能」と謳っていても、生成されたコンテンツが第三者の権利を侵害しないことまでは保証されていないためです。
ネット上の情報を利用する場合と同様、AIが生成した成果物についても必ず人の目でチェックを行い、各種権利の侵害リスクを認識しておくことが重要です。
生成物に著作権を確保したい場合は、人が手を加えるか、自社の作品を大量に学習させたモデルを使用するといった対策が必要になります。
正確性や妥当性は人がチェックする
生成AIには、事実と異なる情報を作り出す「ハルシネーション」のリスクがあります。正確なデータをもとに学習していても、虚偽の情報が生成されるケースはあります。とくに生成AIが作る文章は説得力があるため、誤情報が紛れ込みやすいのが実情です。
そのため、数値データや専門用語の定義、調査結果の引用など、客観的事実に関わる部分は一次情報を確認するなど入念にチェックする必要があります。
倫理的に問題のある表現が含まれていないかどうかの確認も欠かせません。
機密情報が漏れない対策を取る
生成AIを利用する際には、機密情報が外部に流出しないよう対策を取りましょう。AIに入力した情報は、学習データとして取り込まれ、他のユーザーへの回答に転用される可能性があるためです。具体的な対策は以下のとおりです。
学習機能を無効化できるサービスを選ぶ
オプトアウト設定で学習対象から除外する
「顧客情報は生成AIに入力しない」などのルールを定める
ただし、すべてのサービス提供者がオプトアウト機能を用意しているわけではなく、提供されていても一定の条件が求められるケースもあるため、あらかじめ確認してください。
関連記事:ChatGPTのセキュリティ・情報漏洩リスクは?安全に利用する5つの対策を紹介
生成AIのビジネス活用に関するよくある質問
最後に、生成AIのビジネス活用について、よくある質問にお答えします。
Q. 生成AIはどんな業界で活用されていますか?
IT・金融・製造・建設・小売・食品・医療・教育など、業界を問わず活用が広がっています。ただし業種によって刺さる理由は異なり、建設・製造ではリスク管理や専門用語対応、小売・食品ではマーケティング領域での活用が目立ちます。
Q. 生成AIの活用でよくある失敗は何ですか?
「とりあえず全部門に一斉導入する」といった目的が曖昧な進め方は、定着せずに終わりやすい失敗パターンです。本記事で紹介した事例の多くは、具体的な1つの業務・成果物に絞って始めています。
Q. 中小企業でも生成AIは活用できますか?
はい、活用できます。大企業の事例は開発リソースが必要なものもありますが、既存の生成AIサービスを使って文書作成やデータ分析の一部を効率化する取り組みは、企業規模を問わず始められます。
Q. 生成AI導入で著作権や情報漏洩のリスクはありますか?
あります。生成されたコンテンツが第三者の権利を侵害する可能性や、入力した情報が学習データに使われるリスクがあるため、利用前にサービスの規約を確認し、社内ルールを整えておくことが重要です。詳しくは本記事の「生成AIを導入するときの注意点」で解説しています。
まとめ|自社の業種に近い事例から、生成AI活用の一歩を踏み出そう
生成AIは、IT・金融・製造・建設・小売・食品・医療・教育など、業界を問わず活用が広がっています。事例を横断して見ると、具体的な業務や成果物から始めていること、AIに任せる範囲を線引きしていることが、活用を定着させている企業に共通するポイントでした。
一方で、著作権・正確性・機密情報といった注意点を押さえずに導入すると、思わぬトラブルにつながる可能性があります。メリットと注意点の両方を踏まえたうえで、検討を進めることが大切です。
本記事で紹介した25の事例のうち、自社の業種や課題に近いものがあれば、まずはその活用シーンを社内で共有するところから始めてみてはいかがでしょうか。
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