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生成AIの社内活用ガイド|7割が使いこなせない原因と導入成功のポイント

生成AIを社内で活用したいものの、どの業務から始めればよいのか、社内データを安全に扱えるのか迷っている方もいるのではないでしょうか。
ラクスル株式会社の調査では、AIを積極的に活用している中小企業層でも67.7%が「使いこなせていない」と回答しており、ツールを導入するだけでは十分に使いこなせないのが実情です。
対象業務や利用ルール、AIに参照させるデータを事前に整理できるかどうかが、活用度を左右します。
本記事では、生成AIを社内で活用できる業務やメリット、企業事例、活用手段、導入手順、リスクと対策まで解説します。
自社でどのように生成AIを活用するか検討する際の参考にしてください。
生成AIの社内活用とは|自社データを安全に業務へ使う取り組み

生成AIの社内活用とは、マニュアル・議事録・顧客対応履歴などを、あらかじめ定めた権限とルールのもとでAIに参照させ、業務に使う取り組みです。
この章では、生成AIを社内で活用する前に整理しておきたい2つの論点を解説します。
社内でのAI活用と一般的な生成AI利用の3つの違い
生成AIを社内で活用できる5つの業務
社内にある知識を組織全体で共有・活用する考え方から整理したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:ナレッジ経営とは?手法・成功事例を初心者向けにわかりやすく解説【2026年最新】
社内でのAI活用と一般的な生成AI利用の3つの違い
社内でのAI活用と一般的な生成AI利用の3つの違いは、以下のとおりです。
決める項目 | 一般的な生成AI利用 | 社内で活用する場合 |
参照させるデータ | 公開情報と利用者がその場で入力した内容 | 社内で参照を許可した資料・データ |
権限と利用ルール | 個人ごとの判断に委ねられやすい | 入力可否・閲覧範囲・ログの取得を先に決める |
回答の扱い | 下書きやアイデア出しの補助 | 根拠を確認したうえで業務に使う |
一般的な生成AIは、公開情報やその場で入力した情報をもとに利用します。一方、生成AIを社内で活用する場合は、就業規則やマニュアルなど、自社が保有する資料を参照させられる点が異なります。
また、社内情報を扱うため「誰がどの資料を参照できるか」などを、個人の判断ではなく組織のルールとして決めて運用する必要があります。
生成AIを社内で活用できる5つの業務
生成AIを社内で活用できる業務の例として以下の5つを紹介します。
業務 | 活用の例 | 向いている部門 |
問い合わせ対応 | 規程や手順を根拠にした一次回答の作成 | 人事・総務・情報システム |
文書検索 | 保存場所をまたいだ資料の横断検索 | 全部門 |
会議記録の活用 | 議事録の要約と決定事項の抽出 | 全部門 |
資料作成の支援 | 承認済み情報を反映した下書きの作成 | 営業・企画 |
定型業務の支援 | 分類・集計・転記といった繰り返し作業 | バックオフィス |
最初に生成AIを社内で活用する際は、質問が繰り返し発生し、答えの根拠となる資料がそろっている業務から選ぶと効果を測りやすくなります。
一方で、個別判断や対外交渉まで任せると確認の手間が増え、かえって非効率です。AIに任せる範囲を先に線引きしておきましょう。
社内業務にとどまらず、ビジネス現場全体で生成AIを活用して業務効率化を図る具体的なパターンや事例は、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事: 【活用事例あり】生成AIでできることとは?ビジネス業務を効率化する使い方
なぜ今、生成AIの社内活用が求められるのか|4つの背景

生成AIの社内活用が求められている背景には、企業が抱える業務上の課題と生成AIの利用拡大があります。
主な背景を整理すると、次のとおりです。
背景 | 企業が抱えている課題 | 生成AIを社内で活用することで期待できること |
生成AIの業務利用が広がっている | 社員や部署ごとに異なるAIを使うと、使い方や管理方法がばらつく | 会社として利用環境やルールを整え、安全に活用できる |
人手不足のなかで生産性向上が求められている | 問い合わせ対応や資料作成など、繰り返し発生する業務に時間がかかる | 検索・要約・資料作成などを効率化し、人が本来の業務に使える時間を増やせる |
社内情報が複数の場所に分散している | Google DriveやSharePoint、社内チャットなどを一つずつ探す必要がある | 複数の保存先から必要な情報をまとめて探せる |
知識やノウハウが個人に偏っている | 担当者の異動・退職によって、過去の判断理由や対応方法が分からなくなる | 過去の資料や記録を検索し、ほかの社員も活用できる |
このように、生成AIは単に文章を作成するだけでなく、社内に蓄積された情報や知識を業務で活用する手段としても期待されています。
生成AIを社内で活用する4つのメリット

社内でのAI活用がもたらす価値は、作業が速くなることだけではありません。
ここでは、活用によってどの業務がどう変わるかを4つに分けて解説します。
探す時間と答える手間を同時に減らせる
個人に閉じた知識を全社で使える状態にできる
社内ルールに沿った回答や資料を作りやすくなる
AIへの質問履歴から改善すべき業務を見つけられる
どれを優先するかで、選ぶべき手段も変わります。まずは解決したい業務を1つ決めてから読み進めてください。
1. 探す時間と答える手間を同時に減らせる
生成AIを社内で活用すると、社員が必要な情報を自分で探せるようになり、資料を探す時間と担当部門が同じ質問に答える手間を同時に減らせます。
会社員が1日に「調べもの」へ使う時間は平均1.6時間で、賃金に換算すると日本全体で1日あたり約1,057億円に相当するという調査結果もあります。
出典:オウケイウェイヴ総研「「社内業務」に関する調査」
こうした「必要な情報を探す時間」を減らす方法の一つが、生成AIに自社の情報を参照させ、社員が自分で質問できる環境を整えることです。
たとえば、経費精算の申請方法を確認したい社員が、総務へ問い合わせる代わりに生成AIへ質問する例を想定します。社内規程やマニュアルをもとに回答を確認できれば、社員が資料を探す時間だけでなく、総務が同じ質問へ繰り返し回答する時間も減らせます。
導入前後の検索時間や問い合わせ件数を記録しておくと、どの程度の効率化につながったかも確認しやすくなるでしょう。
2. 個人に閉じた知識を全社で使える状態にできる
生成AIを社内で活用すると、ベテラン社員しか知らない対応方法や判断理由を、ほかの社員も参照できる知識として残しやすくなります。
以下のような情報を記録して検索対象にすれば、担当者が異動・退職したあとでも過去の経緯や判断理由を確認できます。
手順書
技術資料
過去の対応記録
経験者へのヒアリング内容など
新入社員や新しく業務を担当する社員も、過去の資料や記録から自分で必要な情報を探せるようになります。そのため、教育や引き継ぎにかかる負担も減らせます。
関連記事:暗黙知・形式知とは?違いや変換方法、属人化を防ぐ形式知化の実践法
3. 社内ルールに沿った回答や資料を作りやすくなる
生成AIに規程や商品仕様、過去の提案資料などを参照させると、自社のルールや情報に沿った回答・資料を作りやすくなります。
たとえば、次のような活用が可能です。
人事:就業規則をもとに、休暇制度や申請方法への回答案を作る
営業:商品資料や過去の提案書をもとに、新しい提案書の下書きを作る
カスタマーサポート:FAQや過去の対応履歴をもとに、問い合わせへの返信案を作る
担当者が同じ社内情報を参照して作成できるため、必要な情報の抜けや担当者ごとのばらつきを減らしやすくなります。
4. AIへの質問履歴から改善すべき業務を見つけられる
生成AIへの質問履歴や検索ログを確認すると、社員がどの業務で頻繁に困っているのかを把握できます。
たとえば、次のように改善につなげられます。
同じ申請手順について何度も質問される:FAQや手順書を見直す
同じ資料を繰り返し探している:保存場所を整理する、横断検索できるようにする
生成AIが答えられない質問が多い:参照資料を追加・更新する
質問履歴を確認すれば、生成AIで効率化すべき業務だけでなく、マニュアルや業務フローそのものを見直すきっかけにもできます。
生成AIを社内で活用する4つの手段と目的別の選び方
ラクスル株式会社の調査では、67.7%が「生成AIを使いこなせていない」と回答しています。その背景には、目的に合わない手段を選んでいることも一因として考えられます。まずは自社の課題に合う手段を把握しましょう。
1. 社内AIチャットボット|定型的な問い合わせを自動化する
2. RAG|社内文書を根拠に回答する
3. エンタープライズサーチ|散在する情報を横断検索する
4. AIエージェント|判断後の作業まで支援する
1. 社内AIチャットボット|定型的な問い合わせを自動化する
社内AIチャットボットは、就業規則・申請手順の確認、IT機器の使い方など、繰り返し発生する質問への一次対応に向いています。
設計で見落とされやすいのは、答えられなかったときの対応方法です。担当窓口へつなぐ経路まで用意しておかないと、利用者は結局メールで問い合わせ直すことになり、工数は減りません。
製品ごとの機能や料金を比べたい場合は、社内向け・社外向け・有人連携の違いを整理した比較記事をあわせてご覧ください。
AIチャットボット12選を徹底比較!用途別の選び方・料金・導入ポイントを解説
2. RAG|社内文書を根拠に回答する
RAG(Retrieval-Augmented Generation:質問に関係する社内文書などを検索してから、その内容を根拠に生成AIが回答を作る方式)は、規程・マニュアル・議事録のように更新が続く情報を扱う場合に適しています。
文書を追加すれば回答に反映されるため、モデル自体を作り直す必要がありません。
一方で、古い資料や権限外の資料まで参照させると、回答の信頼性が落ちます。検索対象・更新担当者などを先に決めておきましょう。
導入企業がどの業務でRAGを使っているかは、活用事例をまとめた記事で詳しく紹介しています。
RAGの活用事例13選|部門・業界別の導入効果と成功のポイント
3. エンタープライズサーチ|散在する情報を横断検索する
エンタープライズサーチは、ファイルサーバー・クラウドストレージ・社内システムに散らばった情報を横断して探す仕組みです。回答文を生成せず、必要な資料そのものを早く見つける目的でも使われます。
エンタープライズサーチでは、製品によってファイル名だけでなく、文書の内容などをもとに関連資料を探せます。「前回の価格改定が決まった資料」のように探したい内容を入力すれば、保存先が不明でも関連資料を見つけやすくなります。
エンタープライズサーチの製品の種類や選び方は、詳しく解説した以下の記事をご覧ください。
エンタープライズサーチとは?社内情報を横断検索する仕組み・機能・選び方を解説
4. AIエージェント|判断後の作業まで支援する
AIエージェントは、質問に回答するだけでなく、必要な情報を探しながら複数の作業を連続して実行できる仕組みです。
たとえば「来週のA社との商談準備をして」と指示すると、過去の商談記録や提案書を探し、前回の商談で出た課題を整理したうえで、次回提案のたたき台まで作るといった活用ができます。
たとえば、次のような業務までつなげられます。
会議の議事録から担当者ごとのタスクを整理する
過去の商談資料を調べて次回提案の骨子を作る
複数の資料から必要な数値を集めて比較表を作る
問い合わせ内容を整理して返信メールの下書きを作る
ただし、メールの送信や社内システムのデータ更新まで自動化する場合は、生成AIが実行する前に人が内容を確認できる仕組みを設けましょう。
▼関連記事:【2026年版】自律型AIエージェント完全ガイド|生成AIとの違い・サービス10選
▼関連記事:AIエージェントの作り方|初心者でも無料×ノーコードで始める全手順
目的別に実現手段を選ぶための判断基準
社内に導入するAIは解決したい課題に合わせて、最初に検討する手段を選びましょう。
解決したい課題 | 最初に検討する手段 |
同じ質問への対応を減らしたい | 社内AIチャットボット |
社内文書を根拠に答えさせたい | RAG |
資料の保存場所が分からない | エンタープライズサーチ |
調査・作成・入力まで任せたい | AIエージェント |
【業務別】生成AIの社内活用事例6選

ここからは、生成AIの社内活用事例を6社紹介します。
1. KDDI|社員1万人規模で生成AIの利用環境を整備
2. ヤンマーホールディングス|技術資料を横断検索して技術継承を支援
3. 三協立山|社内アシスタントを作り直して議事録作成時間を75%削減
4. ニッセイアセットマネジメント|企業情報の分析を効率化
5. トヨタ自動車|アクセス権を考慮したRAG基盤を構築
6. 井村屋グループ|役員会議の議事録作成時間を半減
これらの事例はそのまま自社に当てはめるのではなく「どの業務を選び、何を準備したか」を読み取ると参考にしやすくなります。各事例の最後に、自社へ持ち帰れるポイントを添えました。
1. KDDI|社員1万人規模で生成AIの利用環境を整備
KDDIは2023年5月24日、社員1万人が利用できるAIチャットサービス「KDDI AI-Chat」を開始しました。企画業務のリサーチやアイデア出し、文章の下書きなど、日常業務で生成AIを活用できる環境を全社員へ提供しています。
生成AIの利用環境を提供する前に、推進体制も整えています。利用開始の約2週間前となる5月8日には、部門をまたいだ推進チームを立ち上げました。
社外へ情報が漏れない独自の利用環境を整え、業務で安全に使える状態をつくってから全社員へ公開しました。
公開後には、生成AIの基本的な使い方を学ぶ全社員向け研修に加え、業務ごとの専門研修も実施しています。
その結果、2023年12月時点の社内アンケートでは、全社員の7割以上が業務で生成AIを使っていると回答しました。
【成功のポイント】
全社員へツールを配布する前に、安全な利用環境と推進チームを整えた点がポイントです。さらに、利用開始後も研修によって具体的な使い方を伝えたことで「導入したが使い方が分からない」という状態を防ぎ、実際の利用につなげています。
参考:KDDI「KDDIが実践する「生成AI活用」の現在地と未来」
参考:KDDI News Room「社員1万人が「KDDI AI-Chat」の利用を開始」
2. ヤンマーホールディングス|技術資料を横断検索して技術継承を支援
ヤンマーホールディングスでは、社内に技術資料や手順書が蓄積されている一方、必要な情報を探しにくく、経験の浅い担当者が目的の情報へたどり着くまでに時間がかかっていました。
そこで、検索サービスと生成AIを組み合わせたRAG型のナレッジ検索システムを約3週間で構築しました。エンジン事業、エネルギーシステム事業、トラクター事業などへ展開し、それぞれの業務で必要な社内資料を生成AIから検索できるようにしています。
効果も業務単位で計測しました。エンジン事業の内規検索では1人あたり月20分を削減し、利用者60名超で月約1,200分の時間削減につながっています。エネルギーシステム事業のカスタマーサービスでも月100分の短縮が確認されました。
さらに、現場スタッフで構成するDXコミュニティから80以上の活用テーマが生まれ、特定の用途だけで終わらず、ほかの業務へも活用が広がっています。
【成功のポイント】
生成AIを導入したこと自体ではなく「内規検索で何分減ったか」「カスタマーサービスで何分減ったか」と業務ごとに効果を測った点がポイントです。削減時間を数字で確認できるため、次にどの業務へ展開するべきかも判断しやすくなっています。
参考:株式会社ジェーエムエーシステムズ「AWSをプラットフォームとする生成AIの検証から本格活用へ(ヤンマーホールディングス株式会社)」
3. 三協立山|社内アシスタントを作り直して議事録作成時間を75%削減
三協立山は2023年6月に生成AIの活用方針を決め、社内ルールやガイドライン、eラーニングを整備したうえで、社内向けAIアシスタント「AI ふたば」の初期版をリリースしました。
しかし、実際に使い始めると、次の3つの課題が見つかりました。
文字数制限で議事録の自動作成が難しかった
業務での具体的な活用シーンが不明確だった
過去資料の検索が非効率なままだった
そこで同社は、生成AIを幅広い用途に対応させるのではなく「議事録作成」という具体的な用途に絞って基盤を再設計しました。
さらに、自社の商品情報などを検索できるRAG機能を追加し、文字数制限も解消したVer2を約1か月でリリースしています。
その結果、議事録作成時間を75%削減しました。年間では1万5,000時間の業務時間削減が見込まれています。
【成功のポイント】
最初に作った仕組みに固執せず、実際に使われなかった原因を特定してから作り直した点です。
「生成AIで何ができるか」ではなく「どの業務を改善したいか」から用途を絞り直したことで、具体的な成果につながっています。
参考:AWS「三協立山株式会社様の AWS 生成 AI 活用事例:議事録作成時間を 75% 削減する生成 AI アシスタントを1か月でリリース」
4. ニッセイアセットマネジメント|企業情報の分析を効率化
ニッセイアセットマネジメントは、自社専用の生成AI実行環境や、社内情報を参照できるチャットの構築を進め、資産運用業務でどのように生成AIを活用できるか検証してきました。
具体的な活用方法の一つが、社内アイデアソンから生まれた「統合報告書の分析」です。
従来は、担当者が投資先企業の統合報告書を1件ずつ読み、必要な情報を探して整理していました。そこで統合報告書を生成AIに読み込ませ、非財務情報など必要な情報を抽出する仕組みを構築しています。
生成AIが情報の抽出・整理を行い、担当者がその結果を確認して分析する役割分担にしたことで、分析業務の効率は従来の3〜5倍に向上しました。
【成功のポイント】
生成AIの使い道を情報システム部門だけで考えず、実際に業務を行う社員からアイデアを集めた点です。
現場で時間がかかっていた「報告書を読み、必要な情報を抽出する」という具体的な作業に生成AIを当てたことで、担当者が本来の分析に時間を使いやすくなっています。
参考:ニッセイアセットマネジメント「社員発アイデアをもとにした生成AI社内アプリケーションの開発について」
参考:AWS「ニッセイアセットマネジメント、人とAIが協働する統合報告書分析基盤を構築」
5. トヨタ自動車|アクセス権を考慮したRAG基盤を構築
トヨタ自動車の先進技術開発カンパニーでは、部署ごとにRAGを作る動きが広がり、似た仕組みが社内の複数の場所に存在する状態になっていました。
部署ごとに個別のRAGを構築すると、開発や運用が重複するだけでなく、利用できる資料やアクセス権限の管理も複雑になります。
そこで、社内の認証システムと連携した共通のRAG基盤を構築し、複数の部署が同じ仕組みを利用できるようにしました。
ファイルへのアクセス権限も既存の認証システムと連携しており、それぞれの社員が本来閲覧できる資料だけを生成AIから参照できる仕組みです。
自動車設計情報管理部門でこの基盤を利用した結果、問い合わせへの回答や調査にかかる工数を20%程度削減できると見込まれています。
【成功のポイント】
社内資料を生成AIから検索できるようにするだけでなく、既存のアクセス権限と共通基盤を連携させた点です。
社内データを広く活用するほど権限管理も重要になるため、利便性とセキュリティの両方を考えて基盤を設計した事例といえます。
出典:AWS「トヨタ、先進技術開発カンパニーにおいて開発者向けのセキュアな RAG 基盤を AWS 上に構築し、問い合わせへの回答・調査工数を 20% 以上削減」
6. 井村屋グループ|役員会議の議事録作成時間を半減
井村屋グループでは、取締役会や監査役会の議事録を役員自身が作成しており、完成まで約1週間かかる場合がありました。
そこで、会議を録音し、文字起こしや要約、決定事項の整理まで行えるRimo Voiceを導入しました。
役員会議では重要な情報を扱うため、単に文字起こしするだけではなく、会議体ごとにフォルダを分け、閲覧できる社員も限定しています。
導入当初は集音環境の影響によって文字起こしの精度に課題がありましたが、マイクなどの録音環境を見直して改善しました。
その結果、議事録の作成時間は導入前の約半分まで短縮されています。
出典:Rimo「議事録作成時間半減!担当者も「もう業務に欠かせない」| 井村屋グループ株式会社様」
【成功のポイント】
生成AIを導入するだけでなく、実際に精度へ影響していた録音環境まで改善した点です。また、役員会議の情報を扱うことを踏まえ、フォルダや閲覧権限も分けています。ツール・利用環境・情報管理をまとめて改善したことで、実際の業務時間削減につながった事例です。
さらに幅広い業界や部門における生成AIの活用パターン・成功のポイントを網羅的に把握したい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
関連記事:【業界別】生成AIのビジネス活用事例25選!注意点や成功のポイントも解説
社内でのAI活用で注意すべき5つのリスクと対策

社内に生成AIを導入すると、業務効率や生産性の向上が期待できます。一方で、以下のようなリスクがあります。
1. 情報漏洩|入力データと利用環境を管理する
2. シャドウAI|会社が許可していない利用を防ぐ
3. ハルシネーション|誤回答を前提に確認する
4. アクセス権限|機密情報を見せる範囲を分ける
5. 外部データの取り込み|信頼できない情報をそのままAIに読ませない
生成AI導入に伴う情報漏洩などのリスクを抑えるためにも、本章で紹介するリスクと対策を確認しておきましょう。
1. 情報漏洩|入力データと利用環境を管理する
生成AIを業務で使う際は、入力した機密情報や個人情報が社外へ漏れるリスクに注意が必要です。
生成AIへ入力した文章やアップロードしたファイルは、サービスを提供する外部のシステムへ送信されます。そのため、会社が管理していない生成AIへ顧客情報を含む資料などを入力すると、データがどこに保存され、どのように利用されるのかを会社側で把握できない可能性があります。
情報漏洩を防ぐため、社員が利用する生成AIを会社が許可したサービスへ統一し、入力してよい情報と禁止する情報を明確にしましょう。
生成AIサービスを選ぶ際は、以下の項目を確認してください。
確認項目 | 見るポイント |
データの保管場所 | サーバーやデータセンターがどの国・地域にあるか |
学習利用の扱い | 入力した内容がモデルの学習に使われないか |
暗号化 | 通信時と保存時の両方に対応しているか |
アクセス制御 | SSOやIPアドレス制限に対応しているか |
利用ログ | 誰がいつ何を使ったかを管理者が確認できるか |
とくに、機密情報や個人情報を扱う場合は、データがどの国のサーバーへ保存されるのかも確認しておきましょう。
なお、海外のサーバーを利用しているからといって危険というわけではありません。しかし、データを外国で取り扱う場合は、その国の個人情報保護制度なども関係するため、保存先やデータの取り扱いを理解したうえでサービスを選ぶことが大切です。
たとえば、当社サービス(Rimo VoiceやRimoナレッジAI)では、送信されたデータを日本国内のデータセンターで暗号化して保管しています。
サービスごとにデータの保存場所や処理方法は異なるため、自社が扱う情報の重要度に応じて確認し、納得したうえで選びましょう。
Rimo「セキュリティ対策について」
生成AIの企業利用における情報漏洩リスクの詳細や、安全に運用するためのセキュリティ対策については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事: ChatGPTのセキュリティ・情報漏洩リスクは?安全に利用する5つの対策を紹介
2. シャドウAI|会社が許可していない利用を防ぐ
シャドウAIとは、社員が会社の許可していない生成AIを業務で利用することです。生成AIの普及に伴い、企業の情報管理上の課題となっています。実際に、SIGNATE総研が生成AI活用意欲の高い632人を対象に実施した調査では、回答者の34.8%がシャドーAIを実際に利用していました。
出典:SIGNATE総研「AI活用実態調査」(2025年12月版)
未承認の生成AIが使われると、どの社員がどのサービスへ何の情報を入力しているのかを会社側で把握できなくなります。
たとえば、社員が顧客情報や社内資料を個人アカウントの生成AIへ入力した場合、入力したデータの保存場所や学習利用、アクセス状況などを会社側で管理できません。情報漏洩だけでなく、社内のセキュリティルールや個人情報の取り扱いルールに反する可能性もあります。
生成AIを社内で活用するのであれば、単に未承認サービスの利用を禁止するだけでなく、社員が業務で使える公式の環境を用意することが大切です。
そのうえで「利用してよい生成AI」「入力してよい情報」「別のAIが必要になった場合の相談先」を明確にしましょう。
新しい生成AIを使いたい場合の申請窓口も用意しておけば、社員が必要な機能を求めて個人判断で未承認サービスを使う状況を防ぎやすくなります。
3. ハルシネーション|誤回答を前提に確認する
ハルシネーションは、AIが事実と異なる内容をもっともらしく生成する現象です。社内データを参照させても起こるため、重要な判断や対外文書に使う前に、人が根拠資料を確認します。
RAGでも、参照資料が古ければ誤った回答に繋がる可能性があります。そのため、回答に根拠を表示し、資料の更新担当者と更新時期を決めておきましょう。
誤った回答が業務に影響した場合の確認・修正・エスカレーションの担当も、運用ルールに定めておくと対応が遅れません。
4. アクセス権限|機密情報を見せる範囲を分ける
生成AIからすべての社内情報を検索できる状態にすると、本来その情報を見る権限がない社員まで、AI経由で機密情報を取得するリスクがあります。
たとえば、人事評価や給与情報、経営会議の資料、特定顧客との契約情報などは、業務上必要な社員だけが閲覧できる状態にする必要があります。
Google DriveやSharePointでは閲覧制限を設定していても、生成AI側でその権限を引き継げなければ、権限のない社員からの質問に対して機密情報を含む回答を生成してしまう可能性があります。
そのため、利用者の部門や役職に応じて、生成AIが検索・回答に利用できる情報を分けましょう。
既存の認証システムやファイルの閲覧権限を引き継げるサービスであれば、現在のアクセス管理を保ったまま生成AIを利用しやすくなります。
5. 外部データの取り込み|信頼できない情報をそのままAIに読ませない
生成AIにWebページや社外から受け取ったファイルまで参照させる場合は、外部データに含まれる情報をそのまま信用しないことも大切です。
WebページやPDFなどには、人が見ると普通の文章でも、生成AIに対して別の動作を指示する内容を埋め込める場合があります。このような方法で本来とは異なる回答や処理をさせる攻撃を「プロンプトインジェクション」と呼びます。
とくに、生成AIにメール送信やファイルの変更・削除などの実行権限まで与える場合は、意図しない操作につながるリスクが高まります。
対策として、以下のような点が挙げられます。
対策 | 具体的な進め方 |
外部データを必要な範囲に限定する | 信頼できるWebページやファイルだけを参照させる |
実行権限を絞る | メール送信・ファイル変更・削除などの権限を必要最小限にする |
実行前に人が確認する | 外部への送信やデータ更新の前に内容を確認する |
段階的に広げる | まず社内資料の検索・要約から始め、外部連携は必要に応じて広げる |
生成AIを社内へ導入したばかりであれば、まずは信頼できる社内資料の検索や要約などから始め、外部データとの連携や自動実行は必要に応じて段階的に広げると管理しやすくなります。
参考:情報処理推進機構(IPA)「AIセーフティに関するレッドチーミング手法ガイド」
生成AIの社内導入を成功させる6つの手順

生成AIを社内で定着させるには、目的を決めてから、ルール・データ・運用を順に整える必要があります。以下の6つの手順で進めると、現場で試しながら無理なく広げられます。
導入目的とKPIを明確にする
利用ガイドラインとセキュリティルールを決める
業務手順とデータを整理する
小さな対象業務で効果を検証する
全社展開に向けた推進体制を整える
フィードバックを反映して定着させる
1. 導入目的とKPIを明確にする
まず、対象業務と評価指標を具体化します。「問い合わせ対応時間を月○時間減らす」のように、誰のどの作業を、どれだけ改善するかを決めましょう。
導入前に現状の時間・件数・ミスの数を記録しておけば、導入後の効果を比較できます。
2. 利用ガイドラインとセキュリティルールを決める
生成AIの利用前に、入力してよい情報・入力を禁止する情報・AIの回答を確認する担当者・問題発生時の連絡先を決めます。現場が迷わないよう、ガイドラインは具体例を添えて共有しましょう。
利用環境と運用ルールを整えてから展開すると、社員が安全な範囲を判断しやすくなります。
3. 業務手順とデータを整理する
生成AIを導入する際は、まず業務手順をそろえましょう。担当者ごとに進め方や判断基準が異なるままでは、生成AIに参照させる情報も統一できず、回答や処理結果がばらつきやすくなるためです。
株式会社wibの調査では、AI活用で成果が出ている企業の81.5%で、全社または部署単位の共通業務手順が定着していました。
そのため、生成AIを導入する前に、対象業務をどの順番で進めるのか、どの資料を確認して判断するのかを整理しておきましょう。
出典:株式会社wib「AI活用の成果に関する調査」(2026年3月、有効回答500名)
あわせて、生成AIに参照させるデータも整理します。
必要な情報が複数の場所に分散していたり、最新版と旧版が混在していたりすると、生成AIが必要な情報を見つけられない、古い情報をもとに回答するといった問題が起こります。
対象業務で使うマニュアル・規程・FAQ・過去の対応記録などを洗い出し、どの資料を参照させるのか、誰が更新するのかを決めておきましょう。
4. 小さな対象業務で効果を検証する
いきなり全社展開せず、問い合わせが多く、資料がそろっている業務を1つ選んで試します。実際の質問を使い、回答内容・根拠の表示・有人対応への引き継ぎを確認してください。
検証では、適切に回答できなかった質問や修正が必要だった回答を集めます。初期版で見つかった課題をもとに改善すれば、全社展開前に精度を高められます。
5. 全社展開に向けた推進体制を整える
一部の業務で効果を確認できたら、全社展開に向けて担当者の役割を決めます。
生成AIを全社で活用すると、現場からの使い方に関する相談だけでなく、参照データの追加、アクセス権限の変更、セキュリティ上の判断など、さまざまな対応が必要になるためです。
一人の担当者だけですべて対応すると改善が進みにくくなるため、たとえば次のように役割を分けます。
利用部門:実際に生成AIを使い、使いにくい点や改善してほしい点を共有する
推進担当:活用方法や成功事例をまとめ、ほかの部門へ広げる
情報システム・情報管理部門:データ、権限、セキュリティを管理する
経営層:全社展開の方針や投資を判断する
また、効果が出た使い方を社内で共有すると、ほかの社員も「自分の業務ではどう使えるか」をイメージしやすくなります。
たとえば「営業部では過去の提案資料を探す時間を○時間減らせた」のように、具体的な業務と成果を共有し、効果を確認できた使い方からほかの部門へ広げましょう。
6. フィードバックを反映して定着させる
生成AIは、一度導入して終わりではなく、実際の利用状況を確認しながら改善することが大切です。
導入後は、生成AIが答えられなかった質問、社員があまり使っていない機能、更新が必要な資料などを定期的に確認します。
たとえば「経費精算の申請方法」を質問しても正しい回答が得られない場合は、必要な規程が検索対象になっているか、最新版へ更新されているかを確認します。
一方で、特定の機能自体がほとんど使われていないのであれば、社員が使い方を知らないのか、そもそもその業務では必要とされていないのかを確認しましょう。
回答できなかった質問や利用ログ、社員からのフィードバックをもとに原因を切り分け、一つずつ改善することで、実際の業務で使われる状態に近づけられます。
社内AIに社内データやナレッジをためて活用する2ステップ
生成AIを社内で実務活用するには、ツール単体の導入にとどまらず、社内データやナレッジを参照できる状態にすることが不可欠です。
実際、SDEパートナーズの調査(2026年 生成AIツール活用実態調査)では、社内生成AI利用者の83.0%が「機能や精度が実務レベルに達していない」と感じており、要因に「社内システム・ツールとの連携不足(43.3%)」が挙げられています。
出典:SDEパートナーズ「2026年 生成AIツール活用実態調査」
社内情報を生成AIと連携させて実務で活用する環境は、以下の2ステップで整備します。
ステップ1|会議やヒアリングで生まれる知識を記録する
ステップ2|社内データと連携して実務で検索・活用する
ステップ1|会議やヒアリングで生まれる知識を記録する
まずは、資料として残りづらい「口頭のやり取り」をデータ化して記録します。
業務に必要な知識は、最初からマニュアルやドキュメントに記載されているとは限りません。会議や商談で行われる「判断の背景」や「例外対応の理由」といった情報は口頭で共有されることが多く、これらを記録しないと生成AIは結論の理由まで回答できません。
そのため、会議や打ち合わせの録音を活用し、以下の要素をセットで残します。
文字起こし・決定事項:会話の正確な記録と最終判断
要約・担当者・判断理由:結論に至った背景や担当業務の所在
たとえばRimo VoiceのようなAI議事録作成ツールを活用すれば、作成工数を抑えつつ発言内容をデータとして蓄積できます。
「値引き条件を変更した理由は?」「仕様決定の経緯は?」といった自社固有の疑問に対し、AIが過去の会話履歴まで遡って回答できる状態を構築します。
ステップ2|資料・暗黙知・やり取りを生成AIが参照できるようにする
会議記録に加え、判断の根拠となった資料や日常のやり取りもAIから横断して参照・活用できる状態を整えます。
情報の種類 | 主な役割 |
業務資料(規程、提案書、仕様書など) | 商品情報や社内ルールの前提を確認する |
会議・商談記録(文字起こし、決定事項) | 過去の判断や経緯を確認する |
暗黙知(ベテランのノウハウ、判断基準) | 資料化されていない対応手順を補う |
日々のやり取り(チャット、メール) | 資料に残らない相談履歴や細かい経緯を拾う |
これらの情報をAIで利用する方法は、業務規模や既存環境に応じて3つあります。
連携方法 | 特徴 |
都度アップロード(小規模・単発利用) | ChatGPTなどの画面へ必要なファイルを直接添付して利用する。手軽だが社内ルール策定が必須。 |
RAGツールの活用(全社文書の継続参照) | 社内資料を自動検索して回答を生成する仕組み。更新頻度が高い文書の参照に適している。 |
既存システムへの組み込み(専用業務フロー) | CRMや基幹システムに生成AI基盤を連携させる。業務に特化した活用が可能。 |
「社内資料が複数の場所に分散している」「自社の情報を活用できる環境を一から構築するのが大変」という場合は、既存の保存先と連携して検索からタスク実行まで行える RimoナレッジAI の活用がおすすめです。
社内のナレッジを活かしたAI活用なら「RimoナレッジAI」

「社内資料が複数の場所に分散している」「生成AIから自社の情報を活用できる環境を一から構築するのは大変」という場合は、RimoナレッジAIがおすすめです。
RimoナレッジAIは、社内の資料や議事録などを取り込み、自社の情報をもとに生成AIへ質問・指示できるサービスです。たとえば、過去の商談記録や提案資料を横断して次回提案のポイントを整理する、社内規程を確認して問い合わせへの回答案を作るといった使い方ができます。
【活用例】
就業規則、経費精算ルール、社内システムのマニュアルを取り込んでおけば「PCが故障した場合はどこへ申請する?」といった質問に、AIが根拠となる資料を示しながら回答します。
▼質問に対してRimoナレッジAIが回答


総務・人事への問い合わせを減らしながら、新人が自分のペースで疑問を解消できます。
SharePointやGoogle Driveなど既存の情報の保存先とも連携できるため、生成AIで活用するためにすべての資料を新しい場所へ移し替える必要もありません。
また、RimoナレッジAIでは、資料作成など、必要な情報を使ったタスクの実行まで行えます。
社内に蓄積した情報を「保存しているだけ」の状態から、社員が必要なときに検索して業務へ活用できる状態にしたい方は、RimoナレッジAIを試してみてください。
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生成AIの社内活用を進めて、業務効率化と情報活用を実現しよう
生成AIを社内で活用する際は、問い合わせ対応や資料検索など、解決したい業務を明確にしたうえで小さく試しましょう。利用ルールや社内データを整備し、実際の成果や利用状況を確認しながら対象業務を広げることが大切です。
社内資料や会議記録を横断して生成AIから活用できる環境を整えたい場合は、RimoナレッジAIもおすすめです。無料トライアルを活用し、自社の資料を使って実際の業務でどこまで活用できるか確認してみてください。
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